山林の売却方法は?流れや税金、売れないときの対処方法まで徹底解説

山林の売却方法

相続した山林そもそも所有している山林の売却を検討している場合、どのような売却方法を取ればよいのでしょうか。

山林どころか不動産売却が初めての場合は、売却までの流れがわからず不安に思うことも珍しくありません。

そこで本記事では、山林の売却方法と売却が難しい山林の対処方法について解説します。さらに、売却する前に知っておきたい山林の売却相場やかかる費用と税金も紹介するので、ぜひ山林売却の参考にしてください。

監修者紹介
宅地建物取引士
中野香菜 さん
株式会社ジョンソンホームズ

宅地建物取引士。2007年にジョンソンホームズ株式会社に入社し、初めの8年間は住宅営業として活躍。その後営業からマーケティングへとキャリアをシフト。現在に至るまでの8年間マーケティング部門での仕事に携わる。
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山林を売却する3つの方法

山林を売却する方法は3つあります。

  • 不動産会社に仲介を依頼
  • 山林買い取り
  • 森林組合に相談

ご自身の所有している山林は、どの売却方法が合っているか検討しながらチェックしていきましょう。

不動産会社に仲介を依頼する

通常の不動産と同様に、山林を売却する際も不動産会社に仲介を依頼して売買することが可能です。山林の近くにある地域密着型の不動産会社であれば、地域の事情に詳しく顧客をかかえている可能性も高いため、早期の売却が期待できるでしょう。

山林近くの不動産会社に探してもらっても、買い主が見つけられない場合は一括査定サイトなどを使い、山林の仲介売買を依頼できる不動産会社を探しましょう。

山林の査定にも対応している不動産一括査定サイト

不動産の査定は、電話やメールで依頼して査定してもらうことが一般的です。不動産一括査定サイトは手間をかけず、一度に複数の不動産会社に査定を依頼できるサイトです。

一括査定サイトは戸建てやマンションの査定には基本的には対応していますが、山林の査定にも対応しているサイトは多くありません。

「HOME4U」や「リビンマッチ」は、戸建て・マンションのほか、山林や倉庫、農地など幅広い物件種別に対応している一括査定サイトです。手間なく山林の査定依頼をしてみたい方は上記3社のご利用をおすすめします。

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山林買い取りを利用する

不動産会社に直接山林を買い取ってもらう方法もあります。

仲介では買い手が見つかるまで時間がかかります。買い取りならば直接不動産会社が購入してくれるため、山林の買い取りに対応している不動産会社が見つかれば、素早く売却することが可能です。

仲介よりも買い取りのほうが売却金額は下がるというデメリットがありますが、「とにかく手放したい」「なかなか売れずに困っている」という人は、買い取りの利用を検討してみましょう。

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森林組合に相談する

森林所有者同士が出資して設立し、森林の保全や経営など組合員が共同で運営をおこなっているのが森林組合です。山林の売買斡旋や売却の相談に応じているため、森林組合に売却を相談してみるのも一つの選択肢です。

各都道府県ごとにそれぞれ森林組合連合会が設置されています。全国森林組合連合会のサイトから、各都道府県の森林組合連合会を検索することが可能です。

売却が難しい山林の3つの対処方法

山林は買い主を見つけるのが難しい不動産の一つです。

買い取りや森林組合に相談しても売却ができないときには、以下の方法を取ってみましょう。

  • 管理委託
  • 相続土地国庫帰属
  • 山林引取サービス

売却が難しい山林の対処方法について、それぞれ解説していきます。

管理委託する

間伐や枝打ち、下刈りなど、山林は定期的な手入れが必要です。買い主を見つけられず売却まで期間があく場合は、山として適切な状態に保っておかなければなりません

いざ購入希望者が見つかったとしても、放置された山林だと印象が悪くて、売却のチャンスを逃してしまう可能性もあります。山林の手入れは難しく手間がかかるため、山林管理を委託できる業者やボランティアに所有している山林の手入れを依頼するとよいでしょう。

1ヘクタールあたり年間数千円程度かかります。この際にかかる委託料は、国や自治体から補助金が下りる可能性があるため委託業者に相談をしてみましょう。

その他に、森林経営管理制度」といった制度を利用して管理してもらうことも可能です。この制度は自治体によるもので、森林の経営管理を委託して委託された自治体は、林業経営者に再委託して管理をしてもらう制度です。費用を負担することなく管理してもらえますが、要件が当てはまらないと利用ができません。

“参考:富士市「森林経営管理制度」”

相続土地国庫帰属を利用する

相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日にスタートした法務省管轄の制度です。この制度を利用することで、相続によって取得した土地を国庫へ帰属させることができます。

建物が建っていないことや担保権が設定されていないことなど、いくつかの要件を満たしていないと利用ができません

“参考:法務省相続土地国庫帰属制度について

山林引取サービスを利用する

不動産会社や財団などでは、有償の山林引取サービスをおこなっています。相続した山林の場合、売却できずにいると相続税や固定資産税を支払わなくてはなりません。

売りたくても売れないような山林の場合、料金を支払って処分することで税の負担は少なくなります。

山林売却の流れ

山林売却の準備から売却完了までの流れについて説明していきます。

  • 必要な書類準備
  • 土地と所有者の調査をおこなう
  • 不動産会社に査定依頼する
  • 売買契約を締結する
  • 確定申告

必要な書類を揃える

山林を売却する際に必要となる主な書類は以下のとおりです。あらかじめ揃えておきスムーズな売却を目指しましょう。

  • 固定資産税課税明細書
  • 森林簿・森林計画図
  • 地盤図
  • 公図・地積測量図
  • 登記事項証明書

固定資産税課税明細書は、毎年4月初旬に管轄の市町村役場から送られてくる、固定資産税・都市計画税納税通知書に同封されています。森林簿・森林計画図は、山林の状態が詳しく記載されているもので、各自治体の公式サイトで確認ができます。

登記事項証明書と公図、地積測量図は、法務局やオンラインで取得が可能です。地盤図は地質調査総合センターで確認ができる書類ですが、山林売却の際には提示が義務付けられています。入手が難しい書類は不動産会社に相談しながら入手しましょう。

土地と所有者の調査をおこなう

次に山林の状態を把握するための調査をおこないます。名義確認や境界線の把握、林道の有無、樹木の種類や樹齢などを把握しておくとよいでしょう。林道や樹木の種類および樹齢については、登記簿や森林図で知ることができます。

境界線が確定していない場合は、隣地所有者に立ち会ってもらい確定をしておきましょう。境界が把握できていないと面積がわからないため正確な売却金額を決められません。

相続した山林の場合、名義人が変更されていないことがあります。名義人になっていないと売却ができないため、名義変更も済ませておきましょう。

不動産会社に査定依頼する

山林の査定を依頼する場合は、山林売却が得意な不動産会社に依頼しましょう。山林売却の実績があるか、口コミや評判はよいか、などを調べてみてください。

依頼された不動産会社は、地目や面積、伐採状況などを考慮したうえで査定額を算出します。

査定には訪問査定と机上査定がありますが、より売却価格に近い価格を知りたい場合は訪問査定を選びましょう。

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売買契約を締結する

算出してもらった結果をもとに、山林売却が得意な不動産会社を選び媒介契約を結びます。売却活動は不動産会社がおこないますが、購入希望者から希望があれば売り主も山林の説明等をおこないます。

買い主側から価格交渉が提示されれば、不動産会社の担当者に間に入ってもらって交渉をおこないましょう。お互いが納得できれば、宅地建物取引士所有者が重要事項を説明して売買契約を締結します。

確定申告

山林を無事引き渡しした翌年の2月16日から3月15日頃に確定申告をおこないます。

確定申告をおこなうのは山林を売却して利益がでた場合が対象です。山林取得後5年以内に売却した場合の利益は、事業所得または雑所得になります。利益がでた場合は、必要な書類を揃えて必ず確定申告をおこないましょう。

山林の相場価格

山林はどのくらいの価格で売却ができるのでしょうか。ここでは、山林の種別ごとの相場価格とその調べ方について解説していきます。

種類ごとの相場価格

山林の種類は大きく分けて以下の4つです。

  • 都市近隣林地
  • 農村林地
  • 林業本場林地
  • 山村奥地林地

都市近隣林地

市街地の郊外にある林地が都市近郊林地です。市街地の宅地化の影響を受けていて他の林地よりも需要があります。そのため相場価格は比較的高い傾向です。

1㎡あたり1,000円から5,000円が相場とされています。路線価図で現在の評価額を調べることができます。

“参考:国税庁財産評価基準書「路線価図・評価倍率表」”

農村林地

里山とも呼ばれ、農村集落近くにあるのが農村林地です。農村部のなかで、宅地化が進んでいるところに位置すれば、個人からの需要がある可能性があります。

農村林地は宅地化の影響を受けているところと受けていないところがあり、他の種類の林地よりも価格は幅広いです。1㎡あたり1,000円未満が相場といわれています。

林業本場林地

林業を経営するための林地のことを林業本場林地といいます。有名林業地としての銘柄の用材もしくは、準ずる用材を生産している地域です。この種類の林地は宅地に転用することはほとんどありません。そのため相場価格は低く1㎡あたり100円程度が相場です。

山村奥地林地

林道がなく整備もされていない、最も奥地にある林地を山村奥地林地といいます。ここで生えている樹木は人の手が入っていないため、木材としての売買が見込めます。

しかし搬出用の林道がなく活用方法は限定されるため、相場価格は最も低い1㎡あたり100円未満です。

相場価格に影響を与えるもの

山林の相場価格はありますが、相場通りに売れるとはかぎりません。山林の状況によって価格は上下します。以下が山林の価格に影響を与えるおもな要因です。

  • 日照時間・雨量
  • 標高・地質の状態
  • 木材搬出運搬状況
  • 管理の難易度
  • 法による規制や制約

山林は法によって利用の規制がおこなわれていることがあります。森林法や都市計画法などのさまざまな規制によって制限がかかっている山林は、活用がしづらいため相場価格よりも価格が下落してしまう傾向です。

相場価格を調べる方法

所有している山林の相場価格を自分でも調べることが可能です。国土交通省の土地総合情報システムは、実際に売買をおこなった人のアンケートの結果をもとにしているため、より実際の価格に近い相場がわかります。

また、都道府県地価調査の結果を国土交通省の標準値・基準値検索システムで、閲覧することが可能です。

“参考:国土交通省「土地総合情報システム」”
“参考:国土交通省標準地・基準地検索システム「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」”

山林売却にかかる税金と費用

山林を売却する際には、次のような税金や費用が発生します。

  • 山林所得税
  • 譲渡所得税
  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 登録免許税

山林を売却した場合、立木の部分には山林所得税土地の部分には譲渡所得税が課されます。それぞれ別に計算をして確定申告をおこなわなければなりません。

山林所得税は山林を所有していた期間に応じて、税金の区分が変わります。5年以下の所有で林業を営んでいる場合は、事業所得です。林業を営んでいない場合は雑所得に区分されます。

所有期間が5年を超えていた場合は、山林所得として区分されます。山林所得の計算方法は以下の式で求められます。

売却代金-必要経費-特別控除(最大50万円)=山林所得

15年以上所有していた山林の場合、必要経費には特例が認められるため計算方法が変わることに注意しましょう。山林所得税は山林所得に税額をかけて求めることができますが、所得額によって税率は異なります。以下がその計算式と税額です。

(山林所得×1/5×税率)×5-控除額=税金
所得額 税率
195万以下 5%
195万円超330万円以下 10%
330万円超695万円以下 20%
695万円超900万円以下 23%
900万円超1,800万円以下 33%
1,800万円超4,000万円以下 45%
4,000万円超 45%

山林売却の注意点

山林売却は他の不動産売却とは違う点があるため、売却に関する注意点も違います。以下の5点に注意して売却を始めましょう。

  • 買い手がすぐには見つからない
  • 山林の手入れをしておく
  • 境界確定をする
  • 所有し続けるデメリットを知る
  • 山林売却には仲介手数料の決まりがない

買い手がすぐには見つからないことも

山林を売却しようとしても、山林を購入したいと考える人が少なく買い手を見つけるのは難しい傾向です。

売り主側はできるだけ早く高く売りたいと考えるのも当然ですが、需要が少ない山林売却の際は買い手が現れるまで、じっくりと待つことをおすすめします。

山林の手入れをしておく

最低でも、査定前にはできる範囲で構わないので、山林の手入れをしておきましょう。せっかく価値のある樹木があり搬出のできる接道があっても、管理が行き届いていない場合は評価がされにくいです。価値ある山林だとしても売却価格が安くなる可能性があります。

手入れをするのは、山の管理をしたことがない人には労力もかかり難しいでしょう。山のプロに管理委託料を支払い手入れをお願いするのもいいでしょう。

境界確定をする

山林にも宅地などと同じように境界線があります。売却後のトラブルを減らすためには境界線の確定が必要です。境界を確定させることで土地の広さが確定できます。

測量をすると境界線の確定ができますが、山林は広大なため実測でおこなうと多額の費用がかかります。そのため、実測ではなく登記簿の記録をもとに売買する、公募取引をおこなうことが一般的です。

売買契約書の特約には、実際の面積と公募上の面積が違っても、売買代金の変更をおこなわない旨を記載し合意を得ておくとよいでしょう。

所有し続けるデメリットを知る

売却もせず活用もおこなわない山を所有し続けても、固定資産税が発生し支払い続けなければなりません。定期的な管理が必要で手間も費用もかかります。定期的に管理をしていても不法投棄の恐れがあります。

所有し続ける限りデメリットが大きいといえるでしょう。

山林売却には仲介手数料の決まりがない

山林を売却する場合でも、不動産会社に仲介し売却が成功すれば仲介手数料を報酬として支払いますが、山林は宅地建物取引業法の規制対象にはなりません。宅地の仲介のときと違い上限が定まってないため、不動産会社は仲介手数料を自由に設定できます。

不動産会社から多額の仲介手数料が請求されても違法でありません。あらかじめどのくらいの仲介手数料がかかるのか確認しておくと安心できます。

まとめ

山林は不動産会社に仲介を依頼して売却する方法のほか、直接不動産会社に買い取ってもらう方法と森林組合に相談して売却する方法があります。

山林を購入しようと考える人は少なく売却までには時間がかかるため、売却が難しい場合は管理委託をして山林の状態を保ちつつ、買い手が現れるのを待ちましょう。

売却が難しい山林の場合は、買取サービスや相続土地国庫帰属制度の利用も検討してみてください。

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