テナント経営で土地活用するメリット!4つのリスクと対処法、役立つ資格も紹介

テナント経営 メリット

土地は所有しているだけで税金がかかり、定期的に手入れをしないと荒れてしまいます。資産化するために土地を活用する方法はさまざまですが、テナント経営は儲かるのでしょうか。お金をかけて始めても、失敗すると出費はさらに増えてしまいます。

そこで本記事では、テナント経営での土地活用についてメリット・デメリットやリスクへの対処法を解説。成功させると長期的な不労所得になり、利益で事業の拡大や別の資産運用も可能です。ぜひ参考して、テナント経営を始めるか検討してください。

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テナント経営とは

そもそもテナント経営とは、どのような土地活用なのでしょうか。ここでは基本的な収益の仕組みや契約パターン、テナントの種類について解説します。アパートやマンションの賃貸経営との違いも知っておきましょう。

事業者に不動産を貸し出す

テナント経営とは、事業者に不動産を貸し出す土地活用です。収益を得る方法は大きく分けて次の2パターンがあります。

  • 事業者に土地だけ貸し出して地代収入
  • 土地に建物を建てて事業者に貸し出し家賃収入

土地だけを貸し出す場合は、初期費用はかかりません。更地のままでも各種整備は事業者がおこないます。もし活用したい土地が農地であれば、転用の届出をして建物を建てられるように手続きを終わらせておきましょう。

家賃収入を得る場合は、平屋で1,000万円単位、ビルだと1億円単位の費用をかけて建物を建てることになるでしょう。自己資金で負担するには高額なため、融資を受けて始めるのが一般的です。

事業者との契約は4パターン

事業者との契約方法は次の4パターンがあり増す。

契約方法 概要
普通借家契約 ・1年以上の期間で建物を貸し出す契約
・契約の更新あり
定期借家契約 ・契約期間は自由に設定可能
・契約の更新なし(再契約は可能)
・途中解約なし
リースバック契約 ・建築費は事業者が負担し建物を一括賃貸にする
・建築費は賃料から分割で支払い
・契約が終了しても建物は残る
事業用借地契約 ・土地だけを貸し出す
・期間は10~50年未満
・契約終了後は更地で返還

普通借家契約や定期借家契約は、一般的なアパートやマンションの賃貸契約と同様です。普通借家契約では、建物の劣化や家賃滞納など特別な事情がない限り、更新は断れません。定期借家契約は、1年未満の短期でも利用できるので、急成長が見込め増員予定がある事業者が利用しやすいです。

リースバック契約では、初期費用をかけずに将来建物が自身のものになります。事業者が一括で借り上げてくれるため、支払いの滞りもないです。事業用借地契約は、契約期間が長く子供や孫の世代まで続くケースがあります。更地で返還されるため新たな土地活用を始めやすくなっています。

テナントの種類で収益の安定性は変わる

自身で建物を建てる場合、ターゲットとするテナントの種類によって、収益の安定性が変わります。どのようなテナントに入って欲しいのかを想定して建物を建てるとよいでしょう。

具体的なテナントについて、表にまとめました。

テナントの種類 収益の安定性
オフィス 法人の利用が多く長期利用が期待できる
コンビニ フランチャイズならばノウハウがあるため安定する傾向
飲食店 1年以内の廃業率が30%といわれ安定しない
美容院 1年以内の廃業率が60%といわれ安定しない
福祉系の事業(介護や保育園) 需要があるため安定する可能性が高い

収益の安定性は、空室なく利用する事業者がいるかどうかにかかっています。廃業しやすい業種には、次のものがあります。

  • 宿泊業・飲食サービス業:廃業率5.9%
  • 生活関連サービス業・娯楽業:廃業率4.8%
  • 小売業:廃業率4.4%
廃業率=年間の廃業会社数÷年当初の会社数✕100

“参考:中小企業庁2023年版中小企業白書 全体版」”

テナント経営で必要な資格は?

テナント経営に絶対に必要な資格はありません。資格や経験がなくても、テナント経営を始めることができます。

しかし、「テナント経営に役立つ資格を取りたい」「テナント経営について知識を身に付けたいが、何を学べばいいかわからない」と考える人もいるでしょう。

ここでは、テナント経営に役立つ資格や役立つ知識について、どのようなものがあるのか解説します。

テナント経営に役立つ資格

リースバック契約や事業用借地契約をしていると、不労所得として賃料が入り続けます。普通借家契約や定期借家契約でも、管理を委託するなら問題ありません。

自主管理で面積が3,000㎡のビルを建てるなら、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の専任義務があります。また、防火管理者などの資格もあると役立ちます。

テナント経営がうまくいったら、新たに他の不動産投資にも挑戦したいと考えている人なら、宅地建物取引士ファイナンシャルプランナー(FP)の資格をとっておくのもよいでしょう。

テナント経営で役立つ知識

初めての不動産投資の場合は特に、税金や確定申告などお金に関わる知識について勉強しておくことをおすすめします。稼ぎの計算で簿記の資格取得を目指すと、役に立つ知識を得られるでしょう。

確定申告では、個々人の事情によって適用される控除額などが異なります。節税方法なども正しく知っておくと、効率的に資産を増やすことができるでしょう。

人に聞いても自分にも当てはまるかはわからないため、住んでいる自治体の税務署で一度相談や確認をしてみてください。無料で相談できますが、予約が必要な場合もあるため注意しましょう。

テナント経営をする7つのメリット

テナント経営で土地活用を始めるメリットは次の7つです。

  • 高い収益性
  • 居住用より内装の初期費用は安い傾向
  • 原状回復の負担なし
  • 居住用よりトラブルのリスクが低い
  • 募集するテナントによっては立地の影響が少ない
  • 定期借家契約で転用をしやすい
  • 相続税の節税になる

どのようなメリットなのか1つずつ詳しくみていきましょう。

高い収益性

テナントの賃料は、アパートやマンションの賃料より1.5~2倍が一般的です。建物を建てると利回りの目安は5~7%で、初期費用が高額な分だけ、稼げる額も大きくなります。

収益性が高くなる理由は、賃料の決め方にあります。テナントとして貸し出す場合、事業者の収益を元に算出する収益分析法を使います。そのテナントを利用することで稼ぎが増えるならば、賃料が高くても利用する事業者は見つかります。

関連記事:アパート経営の利回り計算方法!最低ラインや目安、利回りアップのコツまで解説

居住用より内装の初期費用は安い傾向

テナント経営の場合、居住用と比べて内装のデザインにこだわったり、キッチンやお風呂などの設備を用意したりする必要はありません。

入居する事業者が用途に応じて用意するため、内装にかかる初期費用は居住用より安くなりやすいです。

導入コストを抑えることができれば、その分早く初期費用を回収することができるため、メリットといえるでしょう。

原状回復の負担なし

入居前の状態に戻す原状回復は、テナント経営だとオーナーの負担はありません。飲食店が退去する場合、テーブルや椅子、壁紙、床、照明、配線、厨房設備まですべて元通りにしてもらえます。構造がむき出しのスケルトン工法を採用していると、内装はすべて解体されて返却されます。

入居時に受け取る保証金(賃料の6~12ヵ月分)があるため、倒産しても原状回復に必要な費用は確保することができます。

契約時に償却金の設定をしていると、使わなくとも一定額は返却不要です。償却年10%の契約では、10年で保証金の全額がオーナーのものになります。

居住用よりトラブルのリスクが低い

法人の利用がメインのテナント経営では、個人が利用する居住用と違い、ゴミ出しや騒音、他の利用者との人間関係によるトラブルなどはおこりにくい傾向です。業務時間外は誰もおらず、24時間営業のコンビニや夜営業の飲食店などでなければ、夜中の騒音トラブルなども発生しません。

大手企業やチェーン店であれば、トラブル対応もマニュアル化されています。オーナーや管理会社が直接対応する事態は少ないでしょう。飲食店では悪臭による近隣からの苦情はありえます。限度を超えたものは不法行為に該当し、対応してもらえなければ損害賠償の請求が可能です。

募集するテナントによって立地の影響が少ない

「安くで借りられるオフィス用のテナントを探している」という企業であれば、駅から離れた立地にもニーズがあります。

一方で、飲食店や美容院であれば立地の影響が大きいため、アクセスが悪いエリアのテナントはニーズが少ないといえるでしょう。

所有している土地の立地が駅から離れた場所であっても、どのようなテナントをターゲットにするかを見誤らなければ、テナント経営がうまくいく可能性はあります。

ただし、駅から離れた土地でテナント経営する場合は、車でのアクセスが前提となるため、利用者分の駐車場を確保できる広さはあるほうがよいでしょう。

定期借家契約で転用をしやすい

テナント経営で定期借家契約は珍しくなく、普通借家契約と違い特別な事情なしでも更新せず明け渡してもらえます。将来転用して別の土地活用を始める場合でも、事前に立てた計画通りに進められるでしょう。

まだ転用を考えておらずテナント経営を続けたいときは、利用者に再契約の打診をしてください。契約期間が短すぎると更新料が利用者の負担になるため、2~3年を目安に契約をするとよいです。

相続税の節税になる

アパートやマンションを含め土地活用で賃貸経営をすると、相続税の節税が可能です。賃貸にしていると自身で使うよりも自由が利かないため、資産の評価額が1~2割下がります。

また、相続財産を現金から建物にすることで、評価額を4~6割下げられます。現金をそのまま残すより、テナントの建築費に充てたほうが節税になります。

テナント経営する4つのデメリット・リスク

テナント経営はメリットの多い土地活用ですが、次の4つのデメリットやリスクもあります。

  • 景気の悪化で空室リスクが上昇
  • 融資を受けにくい
  • 固定資産税の軽減措置が使えない
  • 地震保険への加入が不可

赤字続きの経営をして後悔しないため、始める前にすべて把握しておきましょう。

景気の悪化で空室リスクが上昇

景気の悪化によって、入居している事業者のビジネスが成り立たなくなると、倒産や廃業して空室になります。居住用のアパートやマンションであれば、住処は必要なため景気の影響は少ないです。

景気が悪いままでは、新規ビジネスを始める人も減少するので、利用者を見つけるのも苦労します。特にビルを建ててフロア単位で貸し出していると、空室による影響は大きいでしょう。

景気は自身でコントロールできず、1度できた流れは簡単に変わりません。コロナ禍の影響で東京都心であっても空室は増加しました。予測困難な事態もあるので、覚悟が必要です。

融資を受けにくい

普通借家契約や定期借家契約でテナント経営を始めるには、1,000万円や1億円単位で費用がかかります。融資が必要になりますが、審査に通る保証はありません。資金力や担保だけでなく、テナント経営の実績や経営状況も問われます、初めての土地活用の場合は実績がないため、審査は住宅ローンより厳しくなるでしょう。

そもそも金融機関によっては、テナント経営向けの融資をおこなっていないケースがあります。大手のメガバンクやインターネット銀行、地方銀行など、範囲を広げて調べて、融資の条件から比較してください。

固定資産税の軽減措置が使えない

アパートやマンション経営などの住宅用地としての土地活用であれば、条件を満たすと土地の固定資産税が最大で6分の1になります。しかし、テナント経営では軽減措置が適用されず、満額で納税が必要です。

建物を建てて利用者がいないと、更地と同様の土地の税金に加え、建物の固定資産税・都市計画税を負担しなくてはなりません。将来の相続税は節税できても、累計の増税額で損をする可能性はあります。節税重視で土地活用をしたい人は、テナント経営よりアパートやマンションの賃貸経営のほうが期待できるでしょう。

地震保険への加入が不可

居住用の建物では当たり前の地震保険も、テナントは基本的に対象外です。四国から中部地方にかけた南海トラフや、北海道の千島海溝、東北の日本海溝、首都圏直下などで、今後30年以内の大地震が予測されています。保険なしでは、初期費用を回収する前に、建物に被害が出て使いものにならない可能性も否めません。

一部の企業や店舗の総合保険では、特約で地震保険へ加入することも可能です。保険に興味がある場合は、テナント経営を始める前に最新情報を調べてください。

テナント経営のリスクを回避する4つの対処法

上記で紹介したリスクやデメリットをゼロにはできなくとも、次の4つの対処法で回避しやすくなります。

  • ターゲットを絞ってテナント経営する
  • 建物は耐震性を高め使い勝手のよい構造に
  • 与信をきれいにして頭金も用意
  • 専門業者に相談しながらテナント経営を開始

初期費用が高額になりやすいテナント経営では、失敗すると挽回に何年もかかるでしょう。事前にできることは済ませて、テナント経営にチャレンジしましょう。

ターゲットを絞ってテナント経営する

オフィスでは立地の影響を受けにくくとも、コンビニや飲食店、美容院などの集客が必要なお店では、何も考えず建物を建てても利用者は見つかりません。それぞれのターゲットが使い勝手のよい構造もあるため、絞り込みが重要です。

テナント経営を始めたい土地で、どのようなターゲットにニーズがあるかは、近隣で繁盛しているところを探して調査しましょう。繁盛しているなら、競合があっても事業が成り立つ可能性が高いです。

建物は耐震性を高め使い勝手のよい構造に

地震保険に加入できないリスクは、建物の耐震性を高めることで軽減できます。揺れにくくするため制震性や免震性を高め、被害が最小限になるよう工夫しましょう。建築の初期費用は高額になりますが、建物の担保の評価は上がり寿命も延びます。

また、事業者が利用しやすいよう工夫もするとよいです。例えばオフィス向けのテナントでは、専有部分に柱がない無柱空間にしておくと、事業者は自由度の高い内装のデザインが可能です。共有部分に喫煙ルームがあれば、ビル全体で各社が個別喫煙スペースを確保しなくてよくなります。

与信をきれいにして頭金も用意

融資の審査を少しでも通過しやすくするため、今からでも与信をきれいにして頭金の用意を始めましょう。与信にかかわる年収や勤続年数は、すぐには変えられません。しかし現在返済中の借入がある人は、早期に完済を目指すとよいです。融資で返済可能かどうかは、他の借入も含めて判断されます。消費者金融など金利の高いものがあると、評価は下がります。

また、頭金は用意できる額が増えるほど、審査に通りやすく融資の金利は低いです。金利が0.1%下がるだけでも、長期の融資では累計の返済額に差が付きます。

専門業者に相談しながらテナント経営を開始

初めてのテナント経営では、積極的に情報収集をしていても全て自分で解決するのは難しいかもしれません。そのため、テナント経営は土地活用の専門業者と相談しながら始めるのをおすすめします。

ターゲットの絞り込みや建物の構造などで、新たな知見を得られることもあります。希望を伝えてお任せできれば、利用者探しや契約、管理のトラブル対応まで、ミスなく進められるでしょう。

テナント経営を始める前の疑問

最後に、テナント経営を始める際によくある次の疑問について解説します。

  • テナント経営を始める流れは?
  • 収益を上げるコツは?

疑問は事前に解消しておきましょう。

テナント経営を始める流れは?

土地に建物を建ててテナント経営を始める場合、流れは次のようになっています。

  1. 土地の規制を確認
  2. 専門業者でテナント経営の相談
  3. 建築会社の決定
  4. 工事の着工
  5. 管理の支援会社の厳選・契約
  6. 利用する事業者の募集・内装工事
  7. 経営開始

土地の規制については、用途地域を自治体の公式サイトなどで確認しましょう。テナント用の建築が可能か、建物の敷地面積や高さの制限についても確認してください。建築会社や管理の支援会社は、かかる費用やサポート内容で絞り込んでください。事業者の募集は、希望を伝えて専門業者に任せるとスムーズに進みます。

準備から経営開始までは2年程度かかります。慌てずに一つひとつの工程に納得しながら進めてください。

収益を上げるコツは?

テナント経営で収益を上げるコツは、わずかな隙間でも余すことなく活用方法を探すことです。

例えば、自動販売機の設置だと、スペースは幅1m×奥行0.7m×高さ2m程度です。テナントの利用者を顧客にでき、安定した収入を期待できます。

まとめ

テナント経営は事業者を対象とした賃貸経営です。融資は受けにくく景気で空室リスクは上昇しますが、メリットも多いです。収益性は高く、同規模のアパートやマンションより内装にかかる費用は安い傾向です。リースバック契約で始められると、融資不要で最終的に建物も手には入ります。

安定して利用する事業者が絶えないテナントにするため、専門業者に相談をしてください。どのようなテナントをターゲットにするのかまで想定し、テナント経営の準備を始めましょう。

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