市街化調整区域は売買できる?売却方法と注意点を徹底解説

市街化調整区域 売買

都市計画法により、土地は市街化区域と市街化調整区域にわけられています。所有の土地が市街化調整区域内の土地であれば、その地域には建物を建てる制限がかかっています。

この記事では、「市街化調整区域の土地は売買できるの?」「どのような不動産なら売買しやすいの?」と疑問を持つ人のために、市街化調整区域とは何か、売買できるのか、さらには売買しやすい不動産について解説します。

市街化調整区域内にある不動産の売買を検討している人は、本記事を最後まで読むことで所有している土地が売却できるのか判断することができるようになるでしょう。

市街化調整区域とは

土地は健全な発展・秩序ある整備ができるように、都市計画法によってさまざまなルールが決められています。都市計画法によって定められた市街化調整区域は、どのような特徴を持っている土地なのかを解説します。

都市計画法で定められた区域のひとつ

日本の国土は都市計画区域と準都市計画区域などに分類されていますが、これは都市計画法といって都市の健全な発展と秩序ある整備を図るために作られた法律です。

市街化調整区域とは、街づくりを抑制している地域です。したがって、市街化調整区域では原則開発行為をすることはできません。

所有する土地が市街化調整区域かどうかは、市区町村の都市計画課で確認可能です。

都市計画法による区域の分類

都市計画法によって、土地は都市計画区域・準都市計画区域・都市計画区域外に分けられています。都市計画区域は計画的に街づくりを進めるエリアで、開発と保全のバランスを保ちながら整備しているエリアです。

都市計画区域には、市街化区域・非線引き区域・市街化調整区域の3つに分けられています。区域の特徴を以下の表にまとめてみました。

区域の種類名 内容 制限
市街化調整区域 ・市街化をおこなわない区域 ・建築物が制限されている
・建て替えや増築は許可が必要
非線引き区域 ・市街化があまりおこなわれていない区域
・急激な市街化の可能性が低い
・土地の規制や開発許可の規制が緩い
市街化区域 ・市街化されている区域
・10年程度で市街化を進めていく地域
・市街化を進めるため道路や
下水道などの公共施設を優先的に整備していく

市街化調整区域の土地の評価は?

市街化調整区域は建物が建てられない区域ですが、下水道・電気・ガスといったインフラが整っていません。

土地の評価は市街化区域と比べると評価が低いことが多いです。生活に必要なスーパーや病院などといった公共施設が少なく、ニーズが低いため売却できたとしても売却金額は低いことが予想されます。

市街化調整区域内で売買しやすい不動産の種類

市街化調整区域内の不動産は、すべての不動産が売却しづらいわけではありません。同じ区域内でも売却しやすい場合としづらい場合があります。どのような特徴を持つ不動産が、売買しやすい不動産なのか確認しておくことが必要です。

開発許可を得ている不動産

市街化調整区域内で開発許可を得て建てた建物がある場合は、比較的売買しやすいです。建物と同じ用途・大きさであれば土地を取得後に建て替えができます。

工場や倉庫・店舗などが建っているならば、同業者がそのまま使いやすいため購入される可能性は高まります。開発許可が得られていない場合、新たに開発許可を取らなくてはいけないため、売却の難易度は高いでしょう。

売却しようとする土地に建物がある場合は、事前に開発許可があるかの確認が必要です。

60条証明の建物がある土地

都市計画法による60条証明によって建てた建物がある場合は、売却がしやすいとされています。60条証明とは、これから建築する計画の建物が、都市計画法に適合していることを証明するものです。

農家住宅や公共施設、業務用の建築物は、開発許可や建築許可はいりません。すでに宅地として利用している土地は、都市計画法34条に該当している建物であれば建築が可能です。都市計画法34条に該当するのは以下の建物です。

  • 周辺居住者の日常生活に必要な物品の販売・加工・修理を営む店舗等
  • 農業・林業・漁業に供するもので農産物・林産物・水産物の処理貯蔵加工に必要な施設
  • ゴルフコースや1ha以上のグラウンドや墓苑などの第2種工作物

該当する建物でも、上記の建物を立てる場合には都市計画法34条の許可を得る必要があります。

開発許可が得られる見込みがある不動産

都市計画法34条の立地基準が定められていて立地基準を満たしている場合は、開発許可が得られる見込みがあるでしょう。そのため売買がしやすい不動産とされています。

この立地基準とは、無秩序な市街化を助長する恐れがないものや、容認すべき特別の事由があるものを基準としています。市区町村役場で確認してみましょう。

市街化区域に隣接している不動産

市街化区域に隣接または近接している場合や、市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められるようなエリアは、開発許可がなくとも建物を建てる許可が得られる可能性が高いです。そのようなエリアの場合買い手がつきやすくなります。

許可がおりる可能性があるとはいっても確実ではないため、建て替えやリフォームができない可能性があることも、買い主に伝えておきトラブルの種を減らしておきましょう。

市街化調整区域で売買が難しい不動産の種類

売買がしやすい不動産の種類がある一方で、売買が難しい不動産は存在します。

  • 農地
  • 許可を得ていない・得られない不動産

上記の2つは売買が難しいため注意が必要です。

農地

農地を宅地など農地以外として売却する場合には、転用許可が必須です。転用許可を取るためには農業委員会に申請して審議に通過しなければいけません。市街化調整区域内の他の地目と比べると売却は難しいでしょう。

認められない場合は農地以外への転用ができず、売却相手は農家や農業法人に限られてしまいます。さらに、市街化区域内の農地は、農地法による制限を受けるため困難を極めるでしょう。

関連記事:農地を売却する方法は?売却が難しい理由と流れ・税金と売買条件

許可をていない・られない不動産

開発や建設の許可が得られないか、得ていない不動産は売却がしづらいです。農家住宅や温室は許可が必要ないので問題ありませんが、一般的な住宅は建て替えやリフォームに許可を取らなければいけません。基本的には開発許可が得られないため、購入しても建物が建てられません。

購入しても使い道は、資材置き場や駐車場など制限があります。購入者も限定されるため売却が難しいです。

市街化調整区域の不動産が売りづらい理由

市街化調整区域の不動産が売りづらい理由は以下の3点があげられます。

  • インフラが整っていないため
  • 建物が建てられないため
  • 住宅ローンの審査が厳しい

インフラが整っていないため

行政が積極的にインフラ整備をしているのは市街化区域です。市街化調整区域は市街化区域とは違い、人が住むような地域と想定されていないため、インフラが整っていないことが多いです。

インフラが整っておらず不便なことも多いでしょう整備する際には、その費用を自分で負担する可能性があります。

水道が整備されていなければ、下水道もない場合がほとんどで浄化槽の設置が必要です。このようなデメリットによって、市街化調整区域の土地は購入を敬遠されやすいです。

建物が建てられない

市街化調整区域は、原則的には建物を建てることができません。建てたい場合は許可が必要で厳しい制限がかかっているため、自由に建てられない土地は敬遠されがちです。

売却前に家が建っている土地の場合でも、建て替えやリフォームには許可を取らなければいけません。せっかく購入しても自由に建て替えができないことで購入希望者は少ないでしょう。

住宅ローンの審査が厳しい

不動産を購入する際は住宅ローンの利用が一般的です。住宅ローンは不動産を担保にして貸付けをおこないます。市街化調整区域の不動産の評価額は低いことが多く、担保に値しないことで融資を得られない可能性もあります。

不動産の評価が低く購入代金が安いといっても、住宅ローンを利用しないで購入する場合は、十分な資金を用意しなければならないため、買い手となる人は少ないでしょう。

市街化調整区域の不動産の売買方法

売買が難しいといわれる市街化調整区域の不動産を売却する方法について紹介します。

  • 市街化調整区域専門の不動産会社を利用する
  • オークションを利用する
  • 個人間で売買する
  • 転用して売却する
  • 空き家バンクを利用する
  • 自治体に寄付や売却をおこなう

市街化調整区域専門の不動産会社を利用する

不動産を売買するときは不動産会社に仲介を依頼することが一般的です。市街化調整区域にはさまざまな規制があり、条件の確認をする必要があります。そのため、仲介を依頼をするなら市街化調整区域に詳しい、専門の不動産会社に依頼することをおすすめします。

一般的な不動産会社の場合、市街化調整区域の仲介実績は少なく、ノウハウも豊富ではありません。売却価格は市街化区域に比べると低い傾向で、仲介手数料も安いため、不動産会社側からすると利益の割には手間と経費がかかる仲介となります。

市街化調整区域の地域の実情に詳しい、専門の不動産会社に依頼することで、しっかりとしたサポートが得られるでしょう。

オークションを利用する

インターネットオークションでは土地が出品されています。市街化調整区域の土地は売れにくい土地のため、さまざまな方法を使って購入希望者に物件の周知をおこなう必要があります。

オークションでは安値で取引されていますが、高値で売ることよりも手放すことを優先させたいのであれば、利用してみてもよいでしょう。

個人間で売買する

一般的な不動産売買は不動産会社が仲介しておこないますが、仲介を依頼せず自分で買い手を探して個人間売買をする方法もあります。

この方法の場合は、仲介手数料がかからないというメリットがありますが、あまりおすすめしません。売買契約書や重要事項説明書を、自分で作成しなければならないからです。

このようなハードルが高いため不安な方は、書類作成だけでも不動産会社に依頼することをおすすめします。

転用して売却

売却が難しい市街化調整区域の土地を、農地から宅地へと転用することで売却がしやすくなる可能性があります。農地を購入した場合、宅地として使うためには転用の許可を得なければなりません。あらかじめ転用しておくと、購入希望者が見つかる可能性が高まります。

ただし農地から宅地へといったん変更をすると、もとに戻すのは難しいことに注意が必要です。購入希望者を探すためだけに転用をおこなうのは、市街化調整区域の制度の本来の意義が失われてしまいます。

空き家バンクの利用

空き家バンクは、田舎で暮らしたい人や自然豊かな環境で暮らしたい人をターゲットとしたマッチングサービスです。空き家バンクを活用することで売却先が見つかる可能性があります。

ただし、空き家バンクはどこの自治体にでもあるわけではありません。売却予定の土地の自治体に空き家バンクがある場合は、利用してみるとよいでしょう。

自治体に寄付や売却

自治体側に土地の需要があれば、売却という方法で手放すことが可能です。自治体の発展・計画的な整備のためには道路や公園などの公用地が必要です。そのため、自治体のニーズがあれば、公有地拡大推進法によって土地を売却することができます。

寄付の場合も同様で、ニーズがあれば受け付けてくれることもありますが、必要性がないことが多く断られるケースが多いです。寄付や売却をする前には各自治体に問い合わせをして、ニーズがあるか確認をしてみましょう。

“参考:国土交通省「公有地の拡大の推進に関する法律の規定に基づく土地の先買い制度」”

市街化調整区域を売買する注意点

市街化調整区域の売買にはさまざまな注意点があります。売却する前にどのような注意点があるのか確認しておく必要があります。

  • 区域指定制度を要確認
  • 線引された時期を確認
  • 地目を確認
  • 開発許可が得られるかを確認

区域指定制度を要確認

都市計画法改正によって区域指定制度が導入されました。この制度は、市街化調整区域であっても自治体が指定した区域内の土地に限り、誰でも住宅の開発が可能という制度です。

隣との敷地の距離や建物の戸数、上下水道の整備など、自治体ごとに条件はさまざまです。売却する土地がこの区域に指定されているかは、自治体のホームページや都市計画課で調べることができます。

線引された時期を確認

指定された時期を線引された時期といいますが、所有している建物がどの時期からあったかによって、建て替えができるかが変わるため確認が必要です。

市街化調整区域に指定された年月日よりも前に建っている場合は、売却の際の許可も必要なく同規模同程度の建物であれば、許可なく建て替えが可能です。線引後に建てられたものである場合は、売却後は買い主が許可を得る必要があります。

固定資産税評価証明書や固定資産税納付書で、建築年月日を確認することができます。手元にない場合は市区町村役場の都市計画課に問い合わせをしてみましょう。

地目を確認

土地の地目は、田・畑・山林など現況や利用目的で23の区分にわかれています。どのような地目になっているかを確認しましょう。地目によって売却のしやすさが変わるからです。

地目が農地である場合は、売却対象は農家や農業法人に限られます。売却する際には農業委員会の審査と許可が必要です。必ずしも許可が得られるわけではなく売却先の選択肢が少ないため、売却のハードルが高いといえます。

開発許可が得られるかを確認

売却しようとしている土地の開発許可が下りれば、買い主が購入後に建物が建てやすくなります。そのため、許可が得られる土地なのかを確認しましょう。

自治体ごとで土地の用途や建築プランなど許可の条件は変わります。市街化区域に隣接または近接しているほど許可が下りやすいです。開発許可が下りるかは、自治体の都市計画課などに相談してみましょう。

まとめ

本記事では、市街化調整区域とは何か、売買しやすい不動産やしづらい不動産について解説してきました。市街化調整区域内の不動産は、インフラが整っていないことが多く建物は原則建てられないため、売却がしづらいです。

しかし、開発許可を得ている場合や市街化区域に隣接している土地の場合は、建物が建てやすくなっているため需要もあり、売却がしやすいでしょう。

スムーズな売却のためにも、売買する前には土地の制限や地目について確認してください。

TOPへ