住宅購入で親からの支援額は平均いくら?贈与税の申告は必要?

住宅購入 親からの支援 平均

マイホームを購入するときは、土地代や建築費用の他に税金や手数料などの諸費用も必要です。高額な住宅購入費用を現金一括で支払うのは難しいためローンを組むのが一般的ですが、住宅購入時に親から支援を受けている人はどのくらいいるのでしょうか。

そこでこの記事では、住宅購入者が親や祖父母から受けとった支援額の平均値を紹介します。支援を受けた場合に支払う必要がある贈与税や、親から支援を受けるときのポイントについても詳しく解説しているので、住宅購入を検討している人は参考にしてください。

住宅購入する際の親からの平均支援額

親から贈与を受けた人の平均額

住宅を購入するときは親から支援を受ける人もいます。ここでは、親から受け取る住宅支援金の平均額や年齢別の受贈率と支援額について解説します。

住宅支援金の平均

一般社団法人不動産流通経営協会が実施した「不動産流通業に関する消費者動向調査〈第27回(2022年度)〉」によると、親から贈与を受けて新築を購入した人の平均支援額が998万円で前年よりもやや減少し、中古住宅を購入した人の平均支援額は662万円と前年よりもやや増加する結果になりました。親から贈与を受けた世帯の割合は住宅購入者全体の全体の14.2%と少ないです。

また、祖父母からの贈与として住宅支援金を受け取っている場合も集計されています。祖父母からの住宅支援金の平均額は、新築住宅の場合1155万円、中古住宅の場合292万円です。祖父母から住宅支援金を受け取っている人の割合は住宅購入者全体の2〜3%になります。兄弟姉妹など、親以外の親族から住宅支援金を受け取っている人の割合になると1%以下しか存在しません。

年齢別の受贈率と支援額

年代別の親からの受贈率

次に世帯主の年齢別の受贈率と親から受け取った住宅購入支援額の割合を確認していきましょう。

住宅購入支援金受け取っている割合が多い世帯主の年齢は30〜34才の23.8%です。ついで35〜39才が21.1%のため、30代の世帯主の20%以上が親から住宅購入支援金を受け取っていることがわかります。また、1,000万円を超える高額な住宅購入支援金を受け取っている割合が多いのは、29歳以下と40代です。30代や50代以上は親から700万円以下の住宅購入支援を受けている割合が多くなっています。

画像出典元:一般社団法人不動産流通経営協会不動産流通業に関する消費者動向調査(2022年度)

住宅購入で親から支援を受けたら贈与税を払う

親から住宅購入支援金を受け取った場合は、贈与税を支払う必要があります。ここでは、贈与税の基礎知識について詳しく解説します。

贈与税とは

個人から贈与によって財産を取得した場合に取得した財産に対して課せられる税金が贈与税です。法人から贈与を受けた場合は贈与税ではなく一時所得として所得税がかかります。贈与税は1月1日から12月31日までの1年間に受けた財産の合計額から110万円を差し引いた残額に税率をかけて算出します。これを歴年課税と呼びます。1年間の合計贈与額が110万円に満たない場合は贈与税がかかりません。

歴年課税では贈与者と受贈者の年齢や関係によって税率が異なるため注意が必要です。贈与税の税率は「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の2つに区分されています。

区分 一般贈与財産 特例贈与財産
対象 ・兄弟間の贈与
・夫婦間の贈与
・親から未成年者の子への贈与
・親から成年した子への贈与
・祖父母から成年した孫への贈与

一般贈与財産の場合は、以下の速算表を使用してください。

税率 課税価格(基礎控除後) 控除額
10% 200万円以下
15% 300万円以下 10万円
20% 400万円以下 25万円
30% 600万円以下 65万円
40% 1,000万円以下 125万円
45% 1,500万円以下 175万円
50% 3,000万円以下 250万円
55% 3,000万円超 400万円

特例贈与財産の場合は、以下の速算表を使用します。

税率 課税価格(基礎控除後) 控除額
10% 200万円以下
15% 400万円以下 10万円
20% 600万円以下 30万円
30% 1,000万円以下 90万円
40% 1,500万円以下 190万円
45% 3,00万円以下 265万円
50% 4,500万円以下 415万円
55% 4,500万円超 640万円

“参考:国税庁贈与税の計算と税率(暦年課税)」”

速算表を使用すれば、贈与税額を簡単にシミュレーションすることが可能です。

贈与税がかかるケース・かからないケース

贈与税は基本的に財産の贈与によって発生しますが、財産を受け取っていなくても贈与とみなされるケースがあります。みなし贈与となるケースは、次のとおりです。

  • 土地や建物の譲渡
  • 株式の譲渡
  • 預金の移動
  • 生命保険の名義変更
  • 財産分与
  • 借金の返済免除
  • 奨学金の肩代わり

みなし贈与とは反対に、贈与とみなされない財産もあります。贈与税が非課税の財産は、次のとおりです。

  • 生活費
  • 教育費
  • 祝儀金
  • 弔慰金
  • 香典
  • 見舞金

これらの社会生活を送る上で必要なものには贈与税がかかりません。ただし、著しく高額な場合は贈与税とみなされる場合もあるので注意が必要です。

住宅購入の支援では特例あり

令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たすときは非課税限度額まで贈与税が非課税となります。非課税限度額は省エネ等住宅の場合で1,000万円、それ以外の住宅の場合500万円です。非課税の特例を受けるためには、受贈者が次の要件をすべて満たす必要があります。

  • 贈与者の直系卑属であること
  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18才以上であること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 平成21年分〜令和3年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
  • 配偶者や親族から取得した住宅でないこと
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに全額を住宅用家屋の新築等に充てること
  • 日本国内に住所があり、日本国籍であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること

また、平成15年1月1日から令和5年12月31日までの間に父母や祖父母から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たすときは60歳未満でも相続時精算課税を選択することが可能です。相続時精算課税を選択すると2,500万円の特別控除が利用できます。超えた場合は一律20%の贈与税が課税されますが、相続が発生したときに相続税から贈与税を差し引くことが可能です。

贈与税の申告の納税方法

非課税の特例を受けるためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告書と一定の添付書類を提出する必要があります。提出先は所轄の税務署です。住宅取得等資金の贈与税申告書に必要な添付書類は、次のとおりです。

  • 戸籍謄本
  • 源泉徴収票
  • 住宅の売買契約の写しまたは工事請負契約書の写し
  • 住宅に関する所定の書類

贈与税申告書の提出方法は、窓口への持ち込みか郵送、e-taxの3パターンがあります。e-taxを利用する場合は、マイナンバーカードや利用者識別番号、暗証番号が必要です。贈与税はさまざまな納付方法の中から好きな方法を選択することができます。選択可能な贈与税の納付方法は、次のとおりです。

  • ダイレクト納付
  • インターネットバンキング
  • クレジットカード納付
  • スマホアプリ納付
  • QRコードによるコンビニ納付
  • 金融機関での納付
  • 税務署窓口での納付

贈与税は納期限までに一括で納めましょう。

支援を隠していてもバレる?

住宅購入時に親から支援を受けたことを隠した場合、税務署にバレる確率は高いです。不動産などの大きな買い物をした場合、税務調査がおこなわれている可能性があります。贈与税の申告を適切におこなわなかった場合、無申告加算税が課されてしまうため注意してください。無申告加算税の税率は50万円まで15%、50万円を超える部分に20%も加算されます。

さらに、税務署に対して虚偽の申告をおこなった場合に課せられるのが重加算税という最も重い加算税です。過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%の税率が課せられます。バレた時の罰則が贈与税の申告を隠すことはやめましょう。

贈与税のペナルティ

贈与税には納期限があるため、納付が遅れてしまった場合は納期限の翌日から納付日までの延滞税を併せて納付する必要があります。納付が遅れてしまった場合に課せられるのが延滞税というペナルティです。令和3年1月1日以後の延滞税の割合は、納期限の翌日から2ヶ月を経過するまでが年7.3%、納期限の翌日から2ヶ月を経過した以後は年14.6%です。

延滞税には一定の期間を延滞税の計算期間に含めないという計算期間の特例があります。延滞税の計算期間の特例を利用できるパターンは、次のとおりです。

  • 期限内申告書が提出されていて法定申告期限後1年を経過してから修正申告または更正があったとき
  • 期限後申告書が提出されていて、その申告書提出後1年を経過してから修正申告または更正があったとき
  • 確定申告書を提出した後に減額更正がされ、その後さらに修正申告または更正があったとき

贈与税は原則納期限までに一括で納付する必要がありますが、無理な場合は延納という納税方法を選択することができます。延納を選択するための要件は、次のとおりです。

  • 納税額が10万円を超えていること
  • 一括納付が難しい理由があること
  • 担保を提供すること

これらの要件を満たすことで、5年以下の期間で分割により納付することが可能になります。延納申請をしたい場合は、納期限までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して所轄税務署長に提出してください。延納を選択した場合は年率6.6%の利子税が加算されます。

住宅購入で親から支援を受けるポイント

親から支援金を受けとって住宅を購入する人は少数派です。住宅購入時に親から支援を受けるためのポイントは、次のとおりです。

  • 説得には具体的な理由をつける
  • 支援を受ける契約書を作る
  • 小分けにして贈与税の対策をする
  • 贈与税は最新の情報を確認する

親から住宅購入支援金を受けとるためのコツや贈与税対策について詳しくチェックしていきましょう。

説得には具体的な理由をつける

住宅購入に必要なお金を親から援助してほしいときは、自己資金が足りない理由を正直に伝えて説得するのが一番です。子供の教育資金にお金がかかる場合やまだ若くて給料が少ない場合は、親からの理解が得やすいでしょう。

親が子供にお金を支援してくれるのは当たり前のことではありません。金銭的な苦労をしてほしくないと考える親も多くいます。子供の幸せを願って渡してくれることを忘れないようにしましょう。

支援を受ける契約書を作る

不要なトラブルを避けるために、住宅購入時に親からお金を受け取る場合は契約書を作成しておくことをおすすめします。契約書を作成する最大のメリットは、贈与を受けた事実が証拠として残せることです。贈与契約を結ぶことで、贈与の取り消しを防ぐこともできます。贈与契約書には、次のような項目を記載してください。

  • 贈与した人の氏名と住所
  • 贈与された人の氏名と住所
  • 贈与を受けた日付
  • 金額
  • 贈与の方法

口約束の場合でも基本的には贈与が成立しますが、贈与契約書があれば税務署から税務調査が入った場合でも焦らずに対応できます。契約書を作成したら、お互いに内容をチェックしてから署名と捺印をおこなってください。

小分けにして贈与税の対策をする

贈与税がかからないのは年間110万円までとなっています。非課税枠以上の贈与を受けたい場合は、一気にお金を受け取るのではなく毎年110万円以内で贈与を受け取り続ければ贈与税の課税を回避することが可能です。

しかし、毎年同じ金額を贈与され続けると税務署から定額贈与とみなされる可能性もあります。定額贈与の場合は110万円以下の贈与を受け取っても贈与税が発生してしまうため、申告が必要になってしまうでしょう。定額贈与とみなされないためには贈与契約書の作成が必要です。贈与の時期や金額も変更し、贈与のたびに贈与契約を結べば毎年であっても単発の贈与とみなされるでしょう。

贈与税は最新の情報を確認する

贈与税に関するルールは税制改正によって変更される可能性があります。実際に2024年1月1日からは贈与税に関する法律が変更され、生前贈与の加算期間が3年から7年に延長される予定です。税制改正の内容は国税庁や税務署の公式サイトで随時確認できるため、常に最新情報をチェックしておきましょう。

住宅購入の親からの支援で気になる疑問

最後に住宅購入時に親から支援を受ける時の疑問点について解説します。

  • 片方の親からだけの支援は受けて問題ない?
  • 支援を受け不足額を住宅ローンで購入する流れは?

親からの住宅支援をスムーズに受けるために、わからないことは事前に解消しておきましょう。

片方の親からだけの支援は受けて問題ない?

結婚して家を購入する場合、義両親と両親のどちらか片方から住宅資金贈与を受けてしまうと、支援できなかった親が引け目を感じる恐れがあります。住宅購入時にどちらか片方の親から支援がなかったとしても恨むのはNGです。支援は当たり前ではないので、片方の親に同等の支援を求めるべきではありません。

支援してくれたお金をありがたく受け取って、どちらの家とも変わらない付き合いを継続することが大切です。

支援を受け不足額を住宅ローンで購入する流れは?

親からの支援があれば、金融機関からの借り入れ金額を減らすことができます。贈与を受けたあとに住宅ローンを組む場合の流れは、次のとおりです。

  1. 住宅ローンの相談
  2. 事前審査の申し込み
  3. 事前審査の承認
  4. 本審査の申込
  5. 本審査の承認
  6. 住宅ローン契約を結ぶ
  7. 融資実行

住宅ローンの手続きは物件購入手続きと並行して進めていきます。住宅ローンを組む金融機関を決めるときは金利や条件、各種手数料などを比較してください。審査の申し込みから融資実行までは1ヶ月〜1ヶ月半かかりますが、申し込んだ時期や本人の状況によっても異なります。審査では職業や年収、年齢、その他の返済状況が判断されるため、可能であれば他の借り入れは完済しておくのがベストです。

また、住宅ローンの返済比率は手取りの20〜30%程度に抑えると生活への負担を少なくできるでしょう。返済比率が低いほど生活に余裕が生まれるので、親から支援してもらったお金を使って返済の負担を軽減してください。資金に余裕ができたからといって無理な返済計画を立てるべきではありません。

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まとめ

今回は住宅購入時に親から支援を受ける人の割合や支援額の平均を紹介しました。マイホームを購入するときは多額の資金が必要となるため、親から支援を受けることができれば住宅ローンの負担を軽減することが可能です。

ただし、親から住宅購入時に受け取った金額によっては贈与税が課せられる可能性もあります。親から住宅購入金の援助を受ける場合は、贈与税のルールや特例の適用要件を把握しておくことが大切です。

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