不動産査定書とは?査定書の記載内容や取得方法・費用について解説

不動産査定書とは?査定書の記載内容や取得方法・費用について解説

不動産査定後に手に入る査定依頼書ですが、そもそもどういった書類なのか、どのような見方をすればよいのかわからず困っていませんか?

不動産査定書の中身には、査定額や算出の根拠・同一エリアにおける類似物件の売却額など、さまざまな項目の記載があります。また、無料と有料のものがあるため、自身にどちらが必要か把握しなければなりません

そこで本記事では、不動産査定書の基礎知識や種類、記載内容についてわかりやすく解説します。書類を取得する手順や注目すべきポイントもあわせて解説するので、売却をおこなう際にぜひお役立てください。

この記事を読んでわかること
  • 無料と有料の不動産査定書の違い
  • 書類内に記載される項目や内容
  • 不動産査定書を取得する方法と手順
  • 不動産査定書で目をつけるべきポイント
監修者紹介
宅地建物取引士
中野香菜 さん
株式会社ジョンソンホームズ

宅地建物取引士。2007年にジョンソンホームズ株式会社に入社し、初めの8年間は住宅営業として活躍。その後営業からマーケティングへとキャリアをシフト。現在に至るまでの8年間マーケティング部門での仕事に携わる。
詳しくはこちら

不動産査定書とは?

不動産会社による査定が完了することで受け取れる書類として広く認識されています。不動産の専門家による査定結果が中身に記載されており、物件の価格や査定金額の根拠、物件概要などが記載されているケースが多いです。

実際の不動産査定書を確認したい人は不動産流通推進センターにてサンプルが公開されているので確認してみるとよいでしょう。「戸建て住宅版・RC造戸建住宅版・住宅地版・マンション版」の4つを確認できます。

同サイトの不動産査定書を利用するには料金の支払いが必要となっており、2022年8月31日までであれば年間3,300円、2022年9月1日以降は年間3,630円となります。ただし、基本的には不動産会社が用意するもののため料金を支払ってダウンロードする必要はありません。

不動産査定書の種類について

不動産会社による査定が完了した際に受け取ることの多い不動産査定書ですが、具体的には以下の2種類が存在します。

  • 無料の不動産査定書
  • 有料の不動産査定書

それぞれ取得方法や効力に違いがあるため、詳しく見ていきましょう。

不動産査定後に受け取れる無料の不動産査定書

所有する不動産の売却をおこなう際は、売却活動を始める前に不動産会社へ査定依頼を出すことがほとんどです。その際にもらえる書類が無料の不動産査定書になります。書類のなかには、業者に依頼した物件に関する査定結果が記載されており、売出し価格を決める際の参考として使われます。

費用がかからずに不動産査定書を取得できる理由として、不動産会社が売買仲介して契約成立に至ることで、仲介手数料が得られることが挙げられます。査定を引き受けることで買い主候補を探すことができ、不動産会社にとっても結果利益につながるということです。

不動産会社に作成してもらった不動産査定書は、売却に受けた売出し価格の決定に使われることが多いです。公的な効力は持たず財産分与のためなど裁判所へ提出するための利用はできないので注意する必要があります。

不動産鑑定士による有料の不動産査定書

一方で、不動産鑑定士による不動産査定書を発行してもらう場合は有料となります。

不動産会社の査定結果として受け取れる書類とは異なり、「公的な効力を持つ」点が特徴です。国家資格が必要となる不動産鑑定士が作成しており、どちらか一方の観点からの評価ではなく、公平に不動産を評価していることが信頼性の高さにつながっているといえるでしょう。

このように公的な効力を持ち、公的機関の提出用としても利用できる不動産査定書を鑑定評価書ともいいます。不動産会社経由で発行した査定書とは違い、裁判所や税務署などの公的機関での利用が可能です。

不動産査定書のよくある項目・内容

次に書類内にとく記載される項目、内容について見ていきましょう。作成する不動産会社ごとで多少の違いはありますが、以下の4つの項目が網羅されていることがほとんどです。

  • 不動産の査定価格
  • 不動産の概要
  • 売出価格
  • 周辺環境

売却の仲介業者選びで決め手ともなる書類のため、それぞれ内容を理解しておくことが大切です。

不動産の査定価格

査定依頼により算出された金額は、3ヵ月以内の売却見込みがある金額として設定されています。あくまでも周辺相場価格や物件状態などを確認したうえでの目安となるため、査定価格と同じ金額で売買できるとは限りません。

売出しを開始してもしばらく動きがない場合は、不動産会社と相談して値下げをおこなうことがあります。また、不動産会社によって評価のポイントが異なり、査定依頼先によって価格の違いが生まれることも珍しくありません。

各不動産会社の査定金額や算出理由などを確認し、納得できる価格での販売を開始するためにも、複数の不動産会社からの査定価格を受け取り相見積もりすることをおすすめします。

査定価格の相見積もりは不動産一括査定サイトの利用で簡単におこなえるため、気になる人はこちらの記事も参考にしてください。

関連記事:不動産一括査定サイトおすすめランキング16選を比較【2024年】売却の体験談を掲載!人気サイトの評判や選び方も

不動産の概要

査定した不動産の概要についても書類内に記載されます。概要の具体的な内容として以下の項目が挙げられます。

  • 物件所在地
  • 建物と土地の面積
  • 建物の構造
  • 間取り
  • 築年数
  • 建ぺい率や容積率
  • 最寄り駅からのアクセス

依頼先の会社によって多少内容は異なりますが、不動産を売却するにあたって必要な情報が記載される箇所です。

売出し価格

査定価格をもとに算出した売出し価格も記載されます。不動産の周辺環境や類似物件取引事例を参考にして算出しますが、必ずしも査定価格と同等の値段での売却とはいきません。

不動産の査定金額においてもお伝えしましたが、売出し価格=売却金額ではないことに注意が必要です。

また、売却金額がそのまま手元に残る金額でもありません。住宅ローンの残債の支払い、不動産会社への仲介手数料の支払いなどが発生するため、費用も含めた売出し金額を決めていく必要があります。この売出し価格は査定価格同様に不動産会社によって金額は異なります。

周辺環境

周辺環境も査定価格に影響をおよぼす一因となっているため、記載されるケースが多いです。同等の物件であっても周辺環境により売却価格が変わることが珍しくないためです。

査定価格に影響を与える周辺環境の例として以下のようなものがあります。

  • 土地・建物の方位
  • 前面道路など画地条件
  • 公共の施設や病院、商業施設などの周辺施設
  • 日当り、景観
  • 騒音、振動
  • 環境条件、街路条件

物件によって、他にもさまざまな要因があるため、詳細に関しては不動産会社の担当者に尋ねてみましょう。

不動産価格の評価方法は?

不動産の価値を算出する方法は、取引事例比較法・原価法・収益還元法の大きく3つにわけられます。計算方法や物件種類ごとに正しい算出方法を使用する必要があるため、わかりやすいように以下の表にまとめました。

評価法 対象物件 算出方法
取引事例比較法 ・中古マンション
・中古戸建ての土地部分
取引事例の価格 × 事情補正 × 時点修正 × 標準化補正 × 地域要因比較 × 個別要因比較
原価法 中古戸建ての建物部分 再調達価格×延床面積×残存年数(耐用年数-築年数)÷耐用年数
収益還元法 投資用の収益物件 不動産価格=1年間の純利益÷還元利回り

それぞれの物件に合わせた評価法を用いますが、取引事例比較法は近隣に似たような物件がない場合は使いにくいという欠点もあります。反対に、同じマンションの物件が成約事例としてある場合は、正確な査定価格を算出しやすいでしょう。

原価法では、建物を再度建築した場合のすべての費用をもとに、老朽化した部分も加味して計算します。

不動産査定書の受け取り手順

不動産査定書を受け取りたい場合は、以下3つの手順を踏むことにより書類の取得ができます。

  1. 所有物件を査定できる不動産会社に依頼
  2. 依頼先の業者が物件の調査・査定を実施
  3. 不動産査定書の受け取り

それぞれのステップについて解説します。

1.所有物件を査定できる不動産会社に依頼

所有物件に対応する不動産会社へ査定依頼を申し込むことで不動産査定書の入手が可能となります。申し込みは直接不動産会社足を運ぶ、もしくは電話で依頼するとよいでしょう。

ただし、複数会社での査定価格を比較検討したい人は、不動産一括査定サイトを利用した申し込みがおすすめです。直接会社に出向くことなく、1回のフォーム入力で複数会社に査定依頼を出すことができます。

時間を気にせず自分の連絡先や不動産の所在地・間取り・面積などの情報を入力するだけで査定依頼が完了し、所有する物件に適した不動産会社を複数表示してくれる点もメリットになります。

 

関連記事:不動産一括査定サイトおすすめランキング16選を比較【2024年】売却の体験談を掲載!人気サイトの評判や選び方も

2.依頼先の業者が物件の調査・査定を実施

次に不動産会社が査定のための調査をおこないます。査定方法は机上査定・訪問査定がありますが、売却を見据えた査定をおこなう場合は、訪問査定をおすすめします。

現地の状況を見ずに簡易的に算出する机上査定よりも、直接現地へ足を運び不動産の状況を確認したうえで査定する訪問査定のほうが精度が高いためです。

複数会社に査定依頼をする場合は、訪問査定への対応が負担になると考えられるため、一度机上査定を実施して、気になった会社にのみ訪問査定を依頼するとよいでしょう。訪問査定の場合は現地の立ち会いをしなければならない点も抑えておく必要があります。

3.不動産査定書の受け取り

机上査定では2~3日後、訪問査定は約1週間後に調査結果が反映された不動産査定書が送られてきます。内容を確認して不明点がある場合は、査定書の内訳や根拠について尋ねてみるとよいでしょう。

複数会社に依頼することで相場感をつかめるため、それぞれの査定額と根拠を比較して納得できる会社を見つける必要があります。

また、査定書の内容とあわせて担当者の対応も考慮して、依頼先の不動産会社を選ぶことが重要です。質問への回答があやふやだったり、連絡のやり取りがスムーズにいかない不動産会社を選んでしまうと、そのあとの売却活動に支障をきたす可能性があります。

不動産査定書の発行までに必要となる書類

不動産査定書を取得するためには揃えておく必要のある書類がいくつかあります。また、依頼する不動産会社ごとで必要になるものが異なるため、各依頼先のホームページなどを確認して準備しておきましょう。

登記簿謄本・登記事項証明書

登記簿とは不動産登記に関する情報をまとめたものです。内容は土地や建物など土地の所有者やその氏名・住所と大きさや地目・構造などです。

現在は電子化されて登記事項証明書となっていますが、以前は紙を原本とした登記簿謄本が利用されていました。登記簿謄本(登記事項証明書)は、売却する土地が誰のものであるかを証明するもので、売却する際には必須の書類となります。

最寄りの法務局やインターネットで取り寄せることが可能で、法務局で取得する場合は1通あたり600円、インターネットで取得する場合は1通あたり332円かかります。

公図や確定測量図

土地の売却や土地を含めた物件の売却で必要となるのが公図や確定測量図です。

土地の形状や地番・大きさや隣地との位置についてなどが書かれているのが公図です。確定測量図は土地に接するすべての土地との境界が確定している場合に発行されます。

土地を売却する場合は「土地の広さ×単価」で売却価格を決めるため、公図や測量図が必要です。また、売却後の近隣住民とのトラブルを避けるためにも重要となってきます。

基本的に土地を取得した際に発行されていることが一般的ですが、長く引き継がれた土地の場合は手元にないケースも考えられるため、その際は不動産会社に相談してみるとよいでしょう。

取得には法務局の窓口や郵送、インターネットを選ぶことができます。

身分の証明ができるもの

査定依頼時には身分の証明ができるものを求められることがあります。登記簿謄本の人物と査定依頼者が同じであることを確認するためです。

身分証明として使えるものは、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど写真つきのものや、住民票や印鑑証明書などお住まいの市町村役場で取得できるものが挙げられます。なお住民票や印鑑証明書は発行から3ヵ月以内である必要があるため注意が必要です。

単独所有の場合は所有者本人のみのものだけで問題ありませんが、共有名義の場合は全員分の身分証明書が必要となります。

リフォームやインスペクションの資料

任意での書類となりますが、リフォームやインスペクションを実施している場合は、その果や内容がわかる書類を用意しておきましょう。

どこをどのようにリフォームしたかを記載されていることが必要で、5年以内にリフォームをおこなってるケースでは、不動産の価値が上がることがあります。インスペクションの結果報告書では建物のコンディションがわかるため、買い主が安心して購入ができます。

それぞれ実施後に業者から受け取っていると考えられますが、手元にない場合は依頼した会社に問い合わせてみましょう。

重要事項説明書

査定依頼時には必須となる書類ではありませんが、重要事項説明書があることで査定の参考となります。重要事項説明書は不動産に関する権利や義務、制限についてまとめられています。

通常不動産購入時に不動産会社から受け取っていることが多いため、紛失の場合は購入した不動産会社に問い合わせをしてみるとよいでしょう。不動産会社は重要事項説明書を保管する義務がありませんが、連絡することでコピーを受け取れる可能性もあります。

その他あったほうがよいもの

次に用意していることで、査定結果に影響を及ぼす可能性がある書類をまとめました。

  • 不動産購入時のパンフレット
  • マンションの管理規約
  • 既存住宅の建設住宅性能評価書
  • 瑕疵(かし)担保保険の付保証明書
  • 家の図面や仕様書

物件に関する書類をいつでも提出できるように用意しておくことで、不動産会社が不動産を売り出すときの手間を減らすことができたり、査定額がアップする可能性があります。査定依頼前に書類の整理や準備をしておくとよいでしょう。

不動産査定・売却における必要書類を詳しく知りたい人は、以下の記事もおすすめです。

関連記事:不動産売却の必要書類は?タイミングごとに揃えるべき書類や取得方法を解説

不動産査定書でチェックすべきポイント

最後に不動産査定書の確認する際に、注目すべきポイントについて解説します。複数の査定書を比較する際に特に重要になるため、依頼先の会社を決める前に押さえておきましょう。

査定価格とその算出理由

不動産査定書には、必ず査定価格に関する項目がありますが、ざっくりとした概算値になっていないか確認する必要があります。査定価格の算出の仕方は不動産会社によって異なり、記載の仕方も変わります。

「何百万円~何百万円」というように記載する不動産会社もありますが、価格の幅が広い場合は根拠がはっきりされていないことが多いため注意が必要です。幅を設けていない査定価格を提示する会社のほうが、根拠が明確となっている場合が多く、信頼できる不動産会社といえるでしょう。

ただし、査定価格が高くてもその金額で売却できるとは限りません。特に不動産一括査定サイトを利用する際は、顧客を獲得するためにあえて高い査定価格を提示するケースも少なくありません。

複数会社に依頼する場合は必ず比較検討をして相場感をつかみ、最初から査定価格が高い、もしくは低い査定書の場合は、注意して根拠を確認するのがおすすめです。

内容は充実しているか

不動産査定書はこれと決まった形はありません。不動産会社ごとに内容や形、ページ数も異なります。

不動産査定書の中身には、不動産の概要・売出し価格・査定価格・周辺環境などに加え、現況の写真など不動産会社独自の資料が付け加えられていることが多いです。そのため内容が充実している査定書であれば10ページ以上になることが多いでしょう。

必ずしもページ数が多ければよい、少なければ充実していないといえませんが、最低限の内容が記載されていないこともあるため注意が必要です。

流通性比率

流通性比率は、物件がいかに売りやすいか、つまり物件を売却する難易度を比率で表したものを指します。この流動性比率は100%を基準として上下するものですが、ほとんどの場合は100%のままです。

100%以外の数値が記載されている場合は、なぜそのような数値になっているのか理由が明記されているはずです。記載がない場合は、一度不動産会社に確認してみましょう。

コメントや評価

査定に関するコメント・評価が査定担当者により書かれている場合は、重要な指標の1つとなるため確認してみるとよいでしょう。不動産によるポジティブな点やマイナスポイント、販売方法のアドバイスなどが記載されていることがあります。

また、コメントや評価がわかりやすく充実している場合は、売却を安心して任せられる不動産会社選びの基準ともなります。

まとめ

ここまで不動産査定書について解説しましたがいかがだったでしょうか。

不動産査定書は、査定結果をまとめた資料になりますが、費用が発生するものと無料で手に入るものにわかれるため、法的な効力が必要かどうかで判断して取得する必要があります。

一般的には不動産会社に査定依頼をした結果、無料で受け取れるケースが多いですが、裁判所などの公的機関に提出する必要がある場合は、有料の不動産査定書も考慮しましょう。

書類を受け取るための手順や必要書類、注目すべき項目について解説しましたので、希望に沿った価格でスムーズな売却をおこなうためにも、ぜひ参考にしてください。

TOPへ