事故物件の4つの売却方法とは!価格相場や告知義務まで徹底解説

事故物件 売却方法

事故物件になってしまった不動産を売却したいが、「買いたたかれないか?」「そもそも売れないのでは?」と不安になっていませんか。早く手放したいからと、不動産会社にいわれるまま安く売却してしまうと、後悔をするかもしれません。

本記事では、事故物件の売却について、取り扱いの決まりや具体的な売却方法、効率的に引渡しまで進めるポイントを解説します。事故物件は通常より価値は落ちてしまいますが、納得できる価格で売却できるよう参考にしてください。

監修者紹介
宅地建物取引士
中野香菜 さん
株式会社ジョンソンホームズ

宅地建物取引士。2007年にジョンソンホームズ株式会社に入社し、初めの8年間は住宅営業として活躍。その後営業からマーケティングへとキャリアをシフト。現在に至るまでの8年間マーケティング部門での仕事に携わる。
詳しくはこちら

事故物件でもまずは査定依頼してみよう!

「事故物件だから売れない」と決めつけずに、まずは不動産の査定依頼をしてみることをおすすめします。事故物件でも売れる可能性はあるため、複数の不動産会社に査定依頼してみましょう。

不動産一括査定サイトを利用すると、一度に複数の不動産会社に査定依頼をできるため、事故物件でも対応してくれる不動産会社を見つけられる可能性が高いです。

不動産一括査定 おすすめ 不動産一括査定サイトおすすめランキング22選を比較【2024年5月最新】売却の体験談を掲載!人気サイトの評判や選び方も

また、事故物件を専門に買取を行っている不動産会社に無料査定を依頼してみるのも1つの手です。事故物件の買取を専門に扱う成仏不動産については、以下の記事で詳しく解説しています。

成仏不動産_評判・口コミ 成仏不動産の口コミ・評判は?特徴やメリット・デメリットを解説!

事故物件に関する基礎知識

事故物件の売却方法を紹介する前に、まずは事故物件の基礎知識として定義や義務、価格相場について解説します。自身では事故物件と考えていても、実は通常通りに売却できる可能性もあるため、ぜひ確認してみてください。

2023年現在の制度を知り、納得してから次の段階に進みましょう。

事故物件の定義

実は事故物件に関して、法律で厳密な定義はありません。

2010年10月に、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインを策定しました。2023年時点のガイドラインでは、次のことがおきた場合に事故物件として取り扱われることとなっています。

  • 他殺(殺人)
  • 自殺
  • 事故死
  • 孤独死
  • 火災による死亡
  • 原因が不明な死
  • 長時間人知れず放置された自然死や事故死

老衰や病死、階段などからの転落事故、入浴中の転倒事故、食事の誤嚥は事故物件に該当しません。事件性がなく、どの家庭でも当たり前におこりえる死亡の場合は、通常通りに売却してしまっても問題ないとなっています。

事故物件の売却には告知義務

事故物件に限らず不動産を売却する際は、次の3つの瑕疵を告知する義務があります。

告知義務がある瑕疵 具体例
心理的瑕疵 ・他殺や自殺などで人が亡くなった
・近くに反社会的勢力の事務所がある
・墓地に隣接している
物理的瑕疵 ・雨漏り
・シロアリの被害
・耐震強度不足
法律的瑕疵 ・再建築が不可
・建ぺい率の制限
・容積率の制限

事故物件は心理的瑕疵に該当し、その他の瑕疵も含めて詳細は売買契約書に明記する義務があります。隠したままで売却すると損害賠償を請求される可能性があるため、把握していることは告知しなくてはいけません。

事故物件の価格相場

事故物件の価格相場は、通常の相場から10~50%減が目安です。孤独死や自殺より、事件性がある他殺のほうが減額は大きくなる傾向です。

事故物件であることを理由に値引き交渉される可能性は高いため、通常より安くなるのは初めから覚悟しておいたほうがいいでしょう。

事故物件を売却する4つの方法

事故物件を売却する方法は次の4つです。

  • 不動産会社に仲介を依頼
  • 事故から期間を空けて売却
  • お祓いやリフォームをしてから売却
  • 不動産会社の買い取りを利用

それぞれの売却方法と手順について詳しく解説していきます。

不動産会社に仲介を依頼

事故物件であっても、告知義務を果たすならば売却の制限はされません。不動産会社の仲介でそのまま売り出しても、買い主が見つかる可能性はあります。引渡しまでの流れは次の9ステップです。

  1. 売却のための書類集めや現状把握
  2. 事故物件の査定
  3. 仲介先の不動産会社探し
  4. 媒介契約(不動産会社への仲介の正式な依頼)
  5. 事故物件を売り出す価格の決定
  6. 売却活動(広告を作成してもらい周知)
  7. 内覧
  8. 売買契約
  9. 引渡し

通常の物件でも引渡しまで3~6ヵ月はかかるので、あせらずに買い主が現れるのを待ちましょう。不動産会社を探す際、事故物件の取り扱いが得意なところを選ぶと、ノウハウや顧客を抱えている可能性が高いため、早期売却に期待が持てます。

事故から期間を空けて売却

同じ価格設定でも、事故から期間を空けていたら、買い主の心理的瑕疵が和らいで売却しやすくなる可能性が高いです。例えば、1週間前に事故物件になったと聞かされるのと、昨年に事故があり整理が住んだので売りだしたのでは、印象が変わるでしょう。

どれだけ期間を空ければ売却しやすくなるかの判断は難しいため、まずは不動産会社に相談をしてください。「人の噂も75日」という言葉もありますが、事故物件に抱くイメージは人それぞれです。期間を空けすぎると経年劣化による価値の低下もあります。放置しすぎても売れなくなる危険性が高まるため、売り出す時期は慎重に見極めましょう。

お祓いやリフォームをしてから売却

お祓いやリフォームも、買い主の心理的瑕疵を和らげる手段として有効でしょう。どちらをおこなっても告知義務はなくなりませんが、印象は変えられるかもしれません。

お祓いの相場は3~10万円で、心理的瑕疵が高い物件ほど高額になる傾向です。神社や寺に依頼可能なため、問い合わせてみるとよいでしょう。また、不動産会社によってはお祓いの手配をしてくれるところもありあます。

リフォームは、事故があった部屋のクロスやフローリングの張り替えであれば1平米当たり数千円が目安です。トイレや浴室が現場の場合はユニットごとの交換が必要です。トイレで20~30万円、浴室で90~100万円が相場となります。

不動産会社の買い取りを利用

買い取りは、仲介と違い買い主を探さず不動産会社に事故物件を引き取ってもらう方法です。リフォームなどの手を加えることなく、現状引渡しが可能です。査定額に納得できるならば、決済まで最短1ヵ月以下の場合もあります。

欠点は、仲介を依頼するより20~30%売却金額が安くなってしまうことです。不動産会社は、買い取った物件をリフォームやリノベーションして相場で売り出します。

事故物件前は2,000万円の価値がある場合、事故物件だと通常の仲介で1,000~1,800万円、事故物件の買い取りになると700万円まで下がることもありえます。

効率よく事故物件を売却するポイント

通常より引渡しまでに時間がかかる可能性がある事故物件を、効率よく売却するポイントは次の3つです。

  • 一括査定サイトを活用
  • 相場にあった価格設定
  • 不動産会社のサポートを利用

具体的に何をするのか詳しく解説してきます。

一括査定サイトを活用

一括査定サイトとは、1度の物件情報の入力で複数社へ査定依頼を出せるサイトです。無料で利用できて、査定額から仲介や買い取りでの最新相場を調べられます。

物件の種類や立地から、対応してくれる不動産会社を自動的にリストアップしてくれるので、最寄りの店舗や連絡先を個別に調べる必要はありません。また、登録されているところは一括査定サイトが独自の基準で厳選され、ゼロから自力で厳選するより効率的です。

大まかな査定額だけを知りたい場合は、物件の立地や間取りなどのデータだけで判断する机上査定を利用するとよいです。訪問査定は、担当者が現場を確認するため対応する必要がありますが、机上査定よりも正確な相場を知ることができます。

関連記事:不動産一括査定サイトおすすめランキング16選を比較【2024年】売却の体験談を掲載!人気サイトの評判や選び方も

相場にあった価格設定

不動産の価格は、需要と供給のバランスで決まります。相場にあった価格設定にせず自身の利益を優先していては、いつまでも売却できません。

一括査定サイトの利用などで判明した相場を基準に、いくらで売り出すかを不動産会社の担当者と話し合って決めます。相場通りでも値引き交渉はあり得るため、それを考慮して値付けをしておくと、希望の価格で引渡しやすいです。

相場より極端に高額で売り出すと、いつまでの買い主が現れずに建物の経年劣化が進み、価値が下がり売れにくくなります。維持費の負担も続くので、相場にあった価格設定で売却をおこないましょう。

不動産会社のサポートを利用

仲介で事故物件を売却できる状態にするには、部屋の掃除や家財の撤去などやるべきことが多いです。個別に業者を探していると手間がかかるため、ワンストップでサポートをしている不動産会社を利用するとよいです。

どこまでのサポートがあるかは、不動産会社と媒介契約を結ぶ前に、公式サイトや直接の問い合せで確認してください。中には司法書士や税理士と提携して、相続手続きのアドバイスまでくれるところもあります。

事故物件の売却におすすめの不動産一括査定サイト3選

一括査定サイトの利用者にアンケートを実施し、満足度の高かったサイトを調査した結果、TOP3は次のサイトとなりました。

順位 1位 2位 3位
サービス名
SUUMO売却査定 すまいValue LIFULL HOME’S
総合評価 ★★★★ 4.06 ★★★★ 3.99 ★★★★ 3.94
提携会社数 875店舗 3,845社
同時依頼数 10 6 10
対応エリア 全国(地方も幅広くカバー)
全国(都市部中心)
全国(地方も幅広くカバー)
対応可能な物件 マンション・戸建て・土地 マンション・戸建て
・一棟マンション・土地
・一棟ビル・アパート・その他
マンション・戸建て・土地・投資用マンション・倉庫・工場
特徴 ・知名度が高い
・最大10社へ同時に査定依頼
・サイト内でも相場を閲覧可能
・利用者の安心満足度は95.5%以上
・平均の売却期間は約2.7ヵ月
・成約率は79.7%
・提携会社の多さ
・無料の相談窓口
・匿名でも査定が可能
調査概要 不動産一括査定サイトに関するアンケート
調査方法 web調査
調査項目 利用経験のある不動産一括査定サイトの以下項目を調査
・サイトの使いやすさについての満足度

・対応可能な不動産会社がスムーズに見つかったかについての満足度
・査定結果の納得度についての満足度
・不動産会社の対応・担当者の質についての満足度
・親族や友人にも勧めたいかどうかについての満足度 など
調査期間 第1回調査:2022/7/22~2022/8/26
第2回調査:2024/3/15~2022/4/25
回答数 418

また、各不動産一括査定サイトの回答数は以下のような結果となりました。SUUMO売却査定が最も多い77回答となっています。

各不動産一括査定サイトの回答数

各不動産一括査定サイトの満足度と回答数を集計して、ランキングTOP3を選定しています。

最寄りで名前の知っている不動産会社があっても、登録されているとは限らないため、複数の一括査定サイトを利用するとよいでしょう。

一括査定サイトの詳細や下位のサイトも知りたい人は、次の記事も参考にしてください。

関連記事:不動産一括査定サイトおすすめランキング22選を比較【2024年】売却の体験談を掲載!人気サイトの評判や選び方も

事故物件の売却におすすめの不動産買取業者3選

不動産買取業者は、リフォーム産業新聞が発表した「買取再販年間販売戸数ランキング2023」より、実績が多い次の3社がおすすめです。

順位 1位 2位 3位
会社名
カチタス リプライス レジデンシャル不動産
年間販売戸数 5,209戸
(マンション:366戸・戸建て4,843戸)
1,718戸
(マンション:470戸・戸建て1,248戸)
1,673戸
(マンション:1,673戸・戸建て0戸)
対応エリア 全国 全国 全国(台湾にも支店)
店舗数 130店舗 14店舗 21店舗
対応可能な物件 戸建て・マンション 戸建て・マンション マンション
特徴 ・累計で7万戸以上の買い取り実績
・決済まで最短で3週間
・店舗数の多さ
・カチタスのグループ会社
・独自にリフォームをして再販
・査定なら24時間以内に対応
・マンションの買い取りに特化
・各地域の地元出身者を積極的に採用
・買取業界で急成長中
公式サイト

買取業者の場合、取り扱い物件の傾向が顕著で、レジデンシャル不動産ではマンションに特化しています。問い合せ前に、取り扱ってもらえるかを確認しておきましょう。

【賃貸経営向け】事故物件の予防法

賃貸経営している戸建てやマンションが、事故物件になってしまうと、一時的な収入の減少は避けられません。資産価値の減少も避けるため、次の3つの予防法をおすすめします。

  • 保険に加入
  • 冷暖房の設備を完備
  • 見守りサービスを利用

必要性や予防法の内容を詳しく解説していきます。

保険に加入

加入するのは、死亡事故向けの損害保険です。事故が発生した際、原状回復の費用や賃料の低下を保険でカバーしてくれます。

日本少額短期保険協会が、2022年に発表した「第7回孤独死現状レポート」によると、残置物の処理で約24万円、原状回復で約38万円、家賃収入の減少で約30万円の被害があります。孤独死の中で約10%は自殺です。20代や30代の若い人が入居していても、リスクは無視できません。

冷暖房の設備を完備

冷暖房の設備を完備しておくと、夏場の熱中症や冬場のヒートショックによる死亡リスクを下げられます。特に温暖化の影響で35度を超える猛暑日が増加しているため、入居者に冷房を使ってもらえれば熱中症による孤独死を減らせるでしょう。

設備の初期投資はかかりますが、完備していることは集客のアピール材料にもなります。

見守りサービスを利用

見守りサービスとは、定期的なメールや電話、訪問、室内にカメラやセンサーの設置などをおこない、入居者の安否を確認するサービスです。自然死が発生しても、長い期間発見ができないといった事態を避けられるでしょう。

自治体によっては、高齢者向けの見守りサービスが提供されているところがあります。登録や利用が無料であれば、活用しないのはもったいないです。

事故物件を売却する際の3つの注意点

最後に、事故物件を売却する際の注意点を3つ紹介します。

  • 更地にすると損をする可能性がある
  • 一度住めば告知義務がなくなるは通用しない
  • 事故当事者が名義の物件は名義変更をする

知らずに手続きを進めると、取り返しが付かず損をする可能性もあります。きちんと確認しておきましょう。

更地にすると損をする可能性がある

事故物件を更地にして売却しようとしても、心理的瑕疵の告知義務はなくならず、通常の物件より値下げをしないと売れにくいです。解体費用を差し引くと、建物ありのときより損をする可能性があります。

また、建物がなくなることで、土地にかかる固定資産税や都市計画税の軽減措置が適用されなくなります。固定資産税で最大6倍、都市計画税で最大3倍になるため、更地前より納税額が増えるかもしれません。

もし更地にしても売却が難しいようなら、駐車場経営やトランクルーム経営などの土地活用を検討してみましょう。

一度住めば告知義務がなくなるは通用しない

賃貸物件では、事故物件になっても一度誰かが住めば告知義務なくなると思っている人も多いかもしれません。しかし、2023年現在のガイドラインでは、事故発生から概ね3年が経過していなければ、何人入れ替わりがあっても告知が必要です。

売却の場合は、事故発生から何年経っていても告知義務はなくなりません。1度発生してしまえば、物件の価値は下がってしまうと覚悟してください。

事故当事者が名義の物件は名義変更をする

事故物件の名義が事故当事者のままでは、売却はできません。遺産分割協議後に相続登記で名義変更をすると、売却の手続きを進められるようになります。

物件の名義を法定相続人で共有するのは、避けた方がよいでしょう。実際に売却する際に全員の同意が必要になるため、連絡がつかなくなると売却の目処が立てられません。

早期に売却をしたい人は、事故物件の取り扱いに慣れた不動産会社を見つけましょう。相続からサポートしてもらえれば、引渡しまでの負担を軽減できます。

まとめ

事故物件であっても、仲介の売却や買い取りで手放せます。通常の物件より10~50%安くなる傾向ですが、最新の相場を調べ不動産会社も厳選すると、損失は最低限に抑えられるでしょう。

事故の原因によっては、通常の物件として売り出すことも可能です。国土交通省の最新ガイドラインを確認するか、不動産会社に相談してから最終的な売却方法を検討すると、後悔するリスクは減らせます。

事故物件となり通常より価値は下がっても、不動産は人生で売買するものの中で高額な部類です。少しでも損をしない方法を検討してください。

TOPへ