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リースバックの転リースは、どのような行為なのでしょうか。不動産を活用する方法の1つですが、やりかたによっては違法性があり、リースバックの家から退去を求められるかもしれません。
そこで本記事では、リースバックの転リースについて、仕組みや違法性、合法的に実行するポイントなどを解説していきます。
目次
リースバックの転リースとは
リースバックの転リースとは、リースバックで賃貸契約をしている不動産を、第三者に貸し出して賃料を得ることです。
転リースによって、リースバックのメリットであった、売却した家に住み続けることはできなくなります。しかし、海外赴任や長期旅行といった理由で、利用しない間の賃料負担を軽減するため、第三者への貸し出しを検討するかもしれません。
転リースを、法的な位置づけや合法・違法性について知らずに実行すると、トラブルになる可能性が高いです。転リースを実行する前に、転リースについて正しい情報を知っておきましょう。
国税庁によると転リースは以下のように説明されています。
転リース取引とは、リース物件の所有者(以下「元受会社」といいます。)から当該物件のリースを受けた会社(以下「転リース会社」といいます。)が、元受会社とのリース取引と概ね同一の条件で、さらに同一物件を第三者(リース物件の使用者、以下「エンドユーザー」といいます。)にリースする取引をいいます。
無断の転リースの違法性
リースバックの転リースは、現在契約しているリースバック業者に無断でおこなうと、違法となる可能性があります。なぜ違法性があるかや、注意が必要なケースについて解説していきます。
転リースをすると契約解除の対象となる
リースバックで賃貸契約している物件は、基本的に転リースが民法612条によって、次のように制限されています。
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
“引用:e-GOV法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」”
リースバック会社の許可なしで、転リースをしていると民法違反になり、契約解除をされても文句はいえません。
ルームシェアでも転リースとみなされる可能性がある
ルームシェアであれば、自身が住んでいるのだから問題ないと思うのは間違いです。第三者が利用していることには変わりはないため、転リースとみなされ、退去となるかもしれません。
友人や知人が遊びにきて長期間滞在するなど、ルームシェアと自身は認識していなくとも、第三者が利用するケースはあります。どこからがNGなのかは、貸主であるリースバック会社が判断します。自己判断で貸し出すのは危険と認識しておきましょう。
リースバックで転リースが可能なケースとは
リースバックでの転リースを無断でおこなうことは基本的に禁止されていますが、次のようなケースであれば合法となります
- 事業向けに転リースを許可
- リースバック会社に交渉して転リースの許可を得る
なぜ合法となるのか、詳しく解説していきます。
事業向けに転リースを許可
事業でリースバックをする場合、契約の時点で一定の転リースを許可しているため、合法的におこなえます。
許可される転リースの例として、親会社がリースバックで利用している物件を、子会社が親会社に賃料を支払っているといったケースがあります。また、親会社がフランチャイズの加盟店向けに、物件を転リースといったケースも考えられます。
民法での制限は、承諾なしでの転リース不可や契約解除であって、許可している契約は、その限りではありません。
リースバック会社と交渉して転リースの許可を得る
事業向けではない個人のリースバックでも、リースバック会社と交渉して、許可を得られるならば転リースは可能です。マイホームを売却してしまう前に、リースバック業者が納得できる理由を説明し、契約書で許可の証拠も残しましょう。
すでに転リースが不可のリースバック契約を結んでいても、契約更新のタイミングであれば交渉の余地はあります。リースバックは契約期間が2~3年の定期賃貸借契約が一般的です。更新のタイミングで交渉をもちかけてみてください。
事業で転リースをするメリット
事業者であれば、リースバックの転リースには、次の2つのメリットがあります。
- 不具合の対処の負担軽減
- バランスシートの健全化
メリットについて、それぞれ詳しく解説していきます。
不具合の対処の負担軽減
第三者が物件を利用していて経年劣化などで設備に不具合が発生した場合、転リースしていると対処はリースバック会社がしてくれます。民法606条で次のように定められており、対処は義務です。
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
“引用:e-GOV法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」”
もし自社で物件を所有していると、突発的な出費で運転資金に余裕がなくなる可能性があります。居住用の設備の耐用年数は10~20年程度で、一度に複数個所に不具合がでるのも珍しくありません。
バランスシートの健全化
事業者は、所有する不動産のリースバックで、バランスシートの健全化が可能です。財務分析で使われる総資産利益率(ROA)は、利益を総資産で割ることで算出します。リースバックによって不動産を手放し総資産が減少するため、ROAが改善されます。
バランスシートから不動産を外すオフバランスでROAが高まると、優良企業と判断され株価が上昇する可能性があります。また企業価値の高まりで、金融機関や投資家から評価され、資金調達が容易になるでしょう。
売掛金や手形などの流動資産だけでは、キャッシュフローの改善に限界があります。固定資産である不動産も見直してください。
事業で転リースをするデメリット・注意点
事業者にとって魅力的に見える転リースにも、次のデメリット・注意点があります。
- 転リースで赤字になるリスク
- 物件の価値が下がるリスク
詳しく解説するので、許容できるリスクなのかを判断しましょう。
転リースで赤字になるリスク
転リースでは、入居してくれる第三者が見つからず、赤字になるリスクがあります。リースバックで支払う賃料は売却価格で決まります。売却価格によっては周辺の賃料より高額です。そのような状況で、転リースをして利益を出そうとすると、相場との乖離はより大きくなり入居者が見つからず赤字となります。
また、子会社に貸し出す場合でも、赤字を出さないため相場より高額な賃料の支払いを強いるのは難しいでしょう。
物件の価値が下がるリスク
転リース先の物件の取り扱いに問題があると、経年劣化以上の傷みで価値が下がります。価値が下がると、リースバック会社から契約解除される事態に発展します。
将来は自社で利用する予定の物件であっても、一度契約解除をされてしまうと、再契約は困難です。利用状況を常に監視するのは負担となるため、信用できるところを厳選して、転リースをおこなってください。
リースバックで転リースをするポイント
リースバックでの転リースを成功させるポイントは、次の3つです。
- 転リースの必要性があるのか事前に検討
- リースバック会社を比較
- 権利関係の明確化
転リースの必要性があるのか事前に検討
通常のリースバック契約では転リースは禁止されており、許可されていても赤字のリスクはあります。抱えている問題を解決する方法として、転リースが最適なのか検討が必要です。
例えば、海外出張中の空室で転リースが認められた場合、戻ってくるまでの期間で定期借家契約が考えられます。しかし定期借家契約は、契約期間に制限があるため、周辺の相場より賃料を下げないと入居者が見つかりにくいです。相場より高くなりやすいリースバックの賃料を、カバーしきれない可能性があります。
また、家財は残しておけないため、貸倉庫などに預けておくと帰ってくるまでの期間分だけ費用がかかります。転リースするための手間やリスク以上に、空室中のリースバックの賃料軽減が重要なのか比べてください。
リースバック会社を比較
転リースの許可がおりるリースバック会社でも、利用先によって次のような項目で違いがあります。
- 取扱物件
- 査定額
- リースバックの賃料
- 各種の手数料
- 賃貸借契約の種類
取扱物件は、マンションしか対応していないところから、店舗や事務所までカバーしているところもあります。査定額はリースバック会社で数百万円違いがでることがあるので、複数社での比較は必須です。賃料は、査定額に直結しているので一緒に比較をしましょう。
手数料とは、敷金・礼金・事務手数料・更新手数料などのことです。無料で対応してくれる会社もあるので、数十万円の差が出てきます。賃貸借契約の種類は、普通が選べるかどうかです。定期しか選べなければ、長期の転リースは難しくなります。
おすすめのリースバック会社は、次の記事で紹介しているので参考にしてください。
関連記事:【2024年版|宅建士監修】大手リースバック業者15社のおすすめ比較ランキング!デメリットや選び方も解説
権利関係の明確化
転リースを実行した場合、建物の権利関係には、リースバック会社、自身、転リース先の3者が関わってきます。そこで明確化しておきたいのが、転リース先が起こした問題について、自身がどこまで責任を負う必要があるのかです。
故意や過失で建物の価値が下がった場合、自身が全て損害を補償しなければならないと負担が重いです。リースバック会社と結ぶ契約と同様に、経年劣化など以外での損害は転リース先が対処するなど、賃貸借契約を結ぶ段階で明確にしておきましょう。
リースバック以外の資金調達方法
個人のリースバックは、住宅ローンの返済や突発の資金調達、老後の資金確保などで使われます。まとまったお金を手に入れられても、相場より賃料が高かったり、定期賃貸借契約しか結べなかったりします。そこで、リースバック以外で不動産を利用した、次の資金調達方法について解説します。
- リバースモーゲージ
- 不動産担保ローン
リースバックを実行する前に、自身の都合に合った方法なのか検討しましょう。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージとは、将来契約者が亡くなった際に家を売却して返済に充てることを前提とした資金の調達方法です。お金の受け取り方法には、一括や毎年一定の額など、選択肢があります。
メリットは、資金調達のため家を手放す必要がなく、基本的に利用の年齢制限の上限はありません。長生きするほど融資分を使い切ってしまったり、金利の変動で利息の支払いが増えてしまったりするデメリットはあります。しかし、今の家に最後まで住み続けやすいです。
リバースモーゲージの取扱いは、金融機関がおこなっています。最終的に家が空き家になる予定の人は、融資可能額や金利、担保の条件などを比較して相談しましょう。
関連記事:リースバックとリバースモーゲージの違いは?メリット・デメリットや特徴を比較
不動産担保ローン
不動産担保ローンは、住宅ローンが残っている家でも、返済能力や不動産の価値によって利用できる資金調達方法です。リバースモーゲージと違い、完済できれば家は残り長く住み続けられます。
住宅ローンの返済だけで負担を感じている人や、現在家の価値が低い人は、融資の審査に通らない可能性はあります。
まとまったお金が必要になるのが数年先であれば、住宅ローンの繰上返済が有効です。残債が少ないほど不動産担保ローンを併用しても、返済できると判断してもらえます。
リースバックの転リースでよくある疑問
最後に、リースバックの転リースをする際の、よくある次の疑問を解説していきます。
- セール&リースバックとの違いは?
- サブリースとの違いは?
- 転リースの会計処理はどうなる?
初めての転リースでも不安なくおこなうため、疑問を解消しておきましょう。
セール&リースバックとの違いは?
セールス&リースバックは、上記で紹介してきたリースバックの別称です。売却した家に、賃貸借契約を結んで住み続けます。通常の売却と異なり、将来の再購入できる可能性があるので、今の生活を続けたいが、まとまった資金の調達が必要な人は検討してください。
サブリースとの違いは?
サブリースは、自身が所有する賃貸経営している物件を、業者に貸し出し賃料を受け取る仕組みです。転リースと違い、物件の維持費(固定資産税や融資の返済)は自己負担です。転リースする物件の所有者はリースバック会社のため、維持費の支払う人に違いが出ます。
サブリースでは、物件の入居状況にかかわらず業者から賃料を受け取れるため、空室リスクのない安定した賃貸経営が可能です。サブリース契約の更新で賃料の見直しはありますが、賃貸経営をするなら転リースよりおすすめです。
転リースの会計処理はどうなる?
事業で転リースをする場合、次の3通りの会計処理が必要です。
- リースバック開始時
- 転リース先からの賃料の受取り時
- リースバック会社への賃料支払い時
それぞれの仕分けについて、簡略化した例は次のようになります。
リースバック開始時
借方 | 貸方 |
普通預金 3,500万円 | 土地 1,000万円 建物 1,500万円 事業主借 1,000万円 |
1,000万円の土地を1,500万円、1,500万円の建物を2,000万円で売却と仮定
転リース先からの賃料の受取り時
借方 | 貸方 |
普通預金 12万円 | 預り金 10万円 転リースの差益 2万円 |
リースバックの賃料が10万円、転リースの賃料が12万円と仮定
リースバック会社への賃料支払い時
借方 | 貸方 |
預り金 10万円 | 普通預金 10万円 |
リースバック開始時の利益の計算では、売買による手数料も考慮して、正確に計算してください。
まとめ
リースバックの転リースは、リースバックで賃貸契約している物件を第三者に貸し出しをします。通常の賃貸契約で無断の転リースは禁止されており、契約解除もありえます。
事業向けであれば、親会社がリースバックした物件を、子会社に貸し出すといったケースでの許可は珍しくありません。赤字や物件の価値低下のリスクはありますが、不具合の自己対処は不要でバランスシートの健全化できるメリットはあります。
個人での転リースは、許可取りや入居者探しがうまくいかないかもしれません。もし資金調達が目的ならば、リバースモーゲージや不動産担保ローンも検討をしましょう。