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家は相続する遺産に含まれていますが、住宅ローンが残っている家だとどうなるのでしょうか。
「自分は住んでいないのに返済義務はあるの?」「返済の負担を減らす方法が知りたい」といったように悩んでいる人も多いでしょう。持ち家が遠方にあり、利用予定がなければ扱いにも困ってしまいます。
そこで本記事では、住宅ローンが残る家の相続について、返済義務や負担軽減の方法、必要な手続きなどを解説します。自身では不要な家だからといって、放置はしておけません。ぜひ参考にして、住宅ローンが残る家をどうすべきか判断しましょう。
目次
住宅ローンは相続対象の資産
相続の対象となる遺産には、負債として住宅ローンも含まれます。対象を資産と負債にわけると、次のものが該当します。
資産 | 負債 |
・現金 ・預貯金 ・積立金 ・有価証券(株式など) ・投資信託 ・車 ・不動産(家や土地など) ・動産(貴金属や骨董品など) ・被相続人が受取人の保険金 ・その他(著作権や慰謝料請求権など) |
・住宅ローン ・クレジットカードの未決済 ・リース料 ・未払いのツケ ・未払いの家賃 ・未払いの保険料 ・未払いの医療費 ・未払いの損害賠償 ・未納の税金 |
資産に該当するものが欲しければ、負債もすべて相続が必要です。遺産の分配については遺言書が優先され、なければ基本的に相続人で話し合いをします。
相続する住宅ローンについて不安点や疑問点がある場合は、相続前にファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しておくことが重要です。
団体信用生命保険の適用で住宅ローンを完済
住宅ローンの契約をしていた被相続人が団体信用生命保険に加入していると、保険が適用されるため自己負担なく完済が可能です。
団体信用生命保険とは何か、適用条件や適用方法について解説していきます。
団体信用生命保険とは
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの返済中に加入者に万一のことがあった場合、残債は保険金で完済され家族に家を残せる保険です。申し込みは新規借入や借り換え時のみで、健康状態などの審査に通る必要があります。
団体信用生命保険への加入は一般的で、金融機関によっては住宅ローンの申請条件にもなっています。返済期間は長期で50年のものもあり、完済までになにがおこるかわかりません。
世帯でメインの稼ぎ頭の収入が途絶えてしまうと、共働きであっても返済の継続は難しくなり、滞納や家を手放す必要がでてきます。そのような事態を回避するために、団体信用生命保険は使われています。
団体信用生命保険の適用条件
団体信用生命保険の適用条件の詳細は、加入するものによって変わります。多くの金融機関で採用されている条件には、次のもがあります。
- 加入者の死亡
- 三大疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞)に罹患して特定の状態
- 一定の身体障害状態(人工透析が必要・心臓にペースメーカーなど)
- 要介護の認定
他にも、肝疾患や腎疾患で一定日数の継続入院をすると残債の50%、精神障害以外での入院中は返済を100%保証などがあります。
団体信用生命保険が適用できないケース
団体信用生命保険に加入済みであっても、次のケースでは適用されない可能性があるので注意してください。
- 現在住宅ローンを滞納
- ペアローンを組んでいて契約者の一方は存命
- 加入時に健康状態の虚偽申告
- 加入から1年以内の自殺
- 加入前の病気や障害が原因で適用条件に含まれる障害が発生
ペアローンに関しては、加入者の一方が万一の事態となった場合、加入者の一方が負担していた分のみ保険が適用される場合が多いです。ペアローンを組む場合は、団体信用生命保険の適用範囲を確認しておきましょう。
団体信用生命保険金の請求方法
団体信用生命保険は、加入者が条件を満たしていても自動で適用されるわけではありません。金融機関側に、こちらから知らせる必要があります。
加入者が亡くなった場合、相続人が金融期間に問い合わせをして、次の流れで手続きをおこないます。
- 金融機関の担当に連絡
- 必要書類の用意(死亡証明書など)
- 書類の提出
- 保険会社が支払いの条件を満たしているか審査
- 支払われる保険金で住宅ローンの完済
死亡前に身体障害や要介護などで条件を満たしていると、それ以降に支払っている保険料も返金されます。詳細は担当に聞きながら、不備なく手続きを進めましょう。
【団信なし】相続した家の住宅ローンの負担軽減方法
団体信用生命保険に加入しておらず、住宅ローンが負債としてそのまま残る場合は、次の3つの方法で負担を軽減可能です。
- 他の加入済みの生命保険を適用する
- 相続放棄をする
- 相続して家を売却する
それぞれどのような軽減方法なのか詳しく解説していきます。
他の加入済みの生命保険を適用する
団体信用生命保険に未加入でも他の生命保険に加入していれば、その保険金で住宅ローンの残債の負担を減らせます。団体信用生命保険と違い、保険金で完済できるかはわかりませんが、相続の資産が増える可能性はあります。
生命保険の適用には、保険会社への申請が必要です。加入者が亡くなったことを伝え、指示される手続きをおこなってください。
合わせて、住宅ローンを組んでいる金融機関への連絡も必要です。遺族は保険金を受け取ったら金融機関へ振り込みをします。繰上返済や一括返済の場合は、手数料が発生するため注意しましょう。
相続放棄をする
相続予定の資産より住宅ローンを含む負債が高額であれば、相続放棄をするのも1つの手です。相続人が複数人いる場合は、自身だけ相続放棄することも可能です。相続を知ってから3ヵ月以内に、次の手続きをしましょう。
- 相続放棄をするか資産と負債の合計から判断
- 必要書類の用意(故人や自身の戸籍謄本など)
- 家庭裁判所に提出
家庭裁判所から後日に照会書が届くので、返送すると相続申述受理書が届いて正規に相続放棄が認められます。
相続放棄をすると、資産の中でどうしても所有しておきたい動産などがあっても、受け取ることはできません。住宅ローンの負担のために諦めてよいのか、よく考えてから決断してください。
相続して家を売却する
手放したくない遺産がある場合は、ローンが残る家も相続する必要があります。一度相続してからローンが残る家を売却をして住宅ローンの完済を目指すとよいでしょう。
売却金だけでは残債に届かなくても、自己資金などで不足を補えるならば問題ありません。売却までの流れは次のようになっています。
- 住宅ローンの残債を調べる
- 家の売却価格を査定で調べる
- 不動産会社に売却を依頼
- 家の買い主を探す
- 金融機関に連絡
- 買い主と家の売買契約
- 家の引渡し
引渡しまでの目安は3~6ヵ月で、仲介手数料や印紙代が別途かかります。トータルでかかる費用から、事前にどれだけ負担を軽減できるか見積もっておきましょう。
住宅ローンが残る家の売却については、次の記事でも解説をしています。参考にして手続きを進めてください。
関連記事:家の売却はローン中でも可能?5つの売却方法とオーバーローン時の注意点
関連記事:住宅ローンが残る家の売却方法とは?流れや任意売却についても解説
住宅ローンを完済したら抵当権を抹消
団体信用生命保険や他の生命保険、売却などで、住宅ローンを完済できるだけの資金を確保出るならば、抵当権を抹消する手続きも忘れてはいけません。ここでは、抵当権とはなにか、具体的な抹消方法について解説します。
抵当権とは
抵当権とは、住宅ローンの返済が滞った際、融資をした金融機関などが物件を差し押さえて競売に出し、融資額を回収するための権利です。家が担保となっているかどうかは、不動産の登記簿に記載されています。
抵当権は、住宅ローンを完済しても自動的に抹消はされず、別途手続きが必要です。相続する家によっては、亡くなった人が手続きを忘れていて、抵当権が残ったままのケースもあるかもしれません。住宅ローンを完済していたら、手続きを忘れていても権利を行使されることはなく、抹消の期限もありません。
ただし、抹消しないと登記簿上は抵当権が設定されたままになってしまうため、売却するときに売りにくくなってしまいます。売却前には抵当権を抹消するようにしましょう。
抵当権の抹消方法
自身で抵当権を抹消する場合、手続きは次の4ステップです。
- 必要書類の用意(登記申請書・登記済証・弁済証書など)
- 抵当権抹消登記申請書類を作成
- 法務局へ申請
- 申請の許可
住宅ローンの完済後に、金融機関や保証会社から必要書類が届きます。抵当権抹消登記申請書類は、ひな型を法務局で受け取るか、法務局の公式サイトから入手可能です。
抵当権の抹消は、オンライン申請にも対応しています。添付書類はスキャナーなどでデータ化し、オンライン申請後に原本の提出もします。電子証明書の取得にはマイナンバーカードが必要になるので、用意しておきましょう。
抵当権の抹消は専門家に依頼可能
抵当権抹消に必要な登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。土地と建物に抵当権が設定されている場合は、それぞれに登録免許税が必要となるため2,000円が必要です。
法務局は土日祝日が休みで、平日でも17時頃には閉まります。慣れない書類の作成でミスをする可能性もあるため、手間をかけたくない人は司法書士へ依頼するとよいでしょう。
司法書士への依頼は、報酬として1~3万円程度が必要です。
住宅ローンは相続税から控除
遺産相続では、取得した資産や負債に応じて相続税が発生します。税率は10~55%で、対策をしないと手元に残るお金は大きく目減りします。
そこで、相続税についての計算方法や住宅ローンを使った控除、申告方法を紹介します。
ただし、相続税の計算は複雑となるため、できるだけ税理士に相談して行うことをおすすめします。
相続税の計算方法とは
自身がどれだけ相続税を納税するかは、次の式で計算できます。
課税遺産の総額=課税価格-基礎控除(3,000万円+600万円✕法定相続人の数)相続税=課税遺産総額×法定相続人の法定相続分×税率-控除額
各人の相続税=相続税の総額✕(各相続人の課税価格÷課税遺産の総額)
法定相続の割合は、パターン別に次のようになっています。
法定相続人のパターン | 法定相続の割合 | |||
配偶者 | 子供 | 父母 | 兄弟姉妹 | |
配偶者と子供 | 2分の1 | 2分の1 | – | – |
配偶者と父母 | 3分の2 | – | 3分の1 | – |
配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | – | – | 4分の1 |
配偶者のみや子供のみであれば、相続は全額です。この割合はあくまで目安で、相続人で合意された割合が相続税の計算に使われます。
相続税の非課税対象となる資産
相続遺産の中で、次のものは2023年9月時点で非課税対象になっています。
- 墓地・墓石・各種仏具
- 生命保険の非課税枠(500万円✕法定相続人の数)
- 死亡退職金の非課税枠(500万円✕法定相続人の数)
- 相続財産の寄付分(公益目的の国や公共団体への寄付)
どこまでが相続税の非課税対象になるかは、国税庁の公式サイトで最新情報を確認してください。
住宅ローンを含む負債は控除の対象
住宅ローンを含む負債は債務控除として扱われるため課税価格を計算する式では債務に合計額を入れましょう。団信に加入しておらず住宅ローンが2,000万円残る場合でも、次のような仮定であれば相続税は発生しません。
- 相続人は配偶者と子供1人
- 相続する遺産5,000万円
- 非課税の遺産0円
- 葬式費用など300万円
課税価格=5,000万円-(2,000万円+300万円)=2,700万円
課税遺産の総額=2,700万円-(3,000万円+500万円×2)=-1,300万円
団体信用生命保険を適用して住宅ローンを完済できる場合は、残債を債務控除に含められません。他の生命保険などで完済を目指す際は、控除の対象にして相続税の節税をしましょう。
相続税の申告方法
相続税の申告は、被相続人の所在地を管轄する税務署に、死亡を知った日の次の日から10ヵ月以内にしなければなりません。事前に遺産分割が必要のため、遺言書がない場合は次の6ステップを実行しましょう。
- 相続人を確定させる
- 資産や負債の調査
- 遺産分割の協議
- 合意できた内容で遺産分割協議書の作成
- 必要書類の用意(戸籍や遺産に関わる資料、遺産分割に関わる資料)
- 税務署に申告
書類の記入漏れや相続税の計算ミスを避けたい人は、e-Taxを利用した申告をおすすめします。記入漏れはエラーなどで教えてもらえ、計算は自動でしてくれます。また、ケアレスミスがあっても手書きと比べ修正は容易です。
遺産分割協議書の作成に不安がある場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。
住宅ローンが残る家を相続する際の注意点
最後に、住宅ローンが残る家の相続をする際の注意点について解説します。
- 名義変更は事前に金融機関へ確認
- 家の相場は複数社で査定を依頼
- 相続放棄しても保存の義務が残る可能性
- 余分な返済は返金を要求する
どれも損をする可能性があるため、事前にきちんと把握しておきましょう。
名義変更は事前に金融機関へ確認
住宅ローン返済中の家の名義変更をする場合、事前に金融機関への確認が必要です。勝手に名義変更してしまうと、一括返済を求められるかもしれません。
団体信用生命保険などで完済できるなら、手続きはスムーズに進められます。しかし、返済をそのまま引き継ぐのは難易度が高いです。引き継ぐ人が残す家に住み、返済能力があるのが前提となります。
家の相場は複数社で査定を依頼
家を売却して住宅ローンの完済を目指す場合は、複数社に査定を依頼して平均をとり、最新の相場を調べましょう。家に定価はなく、査定額は不動産会社によって100万円以上差が出るケースがあります。査定の精度が低いと、実際に売却して相続する他の資産を返済に充てても、高額な不足が出るかもしれません。
査定はどの不動産会社に依頼しても無料です。不動産一括査定サイトを活用すれば、物件情報の入力は一度で、依頼先の自動ピックアップもしてくれます。
おすすめの不動産一括査定サイトや選び方は、次の記事で紹介しているので参考にしてください。
関連記事:不動産一括査定サイトおすすめランキング16選を比較【2023年】売却の体験談を掲載!人気サイトの評判や選び方も
相続放棄しても保存の義務が残る可能性
亡くなった人と一緒に住んでいて相続放棄をする場合は、他の親族も相続放棄をすると、自身に家を保存する責任が残ります。引越しをして管理の怠りが原因で被害がおきると、損害賠償の請求もありえます。
保存の責任を無くすには、家庭裁判所で相続財産清算人の申し立てをおこない、引き継いでもらう必要があります。親族に依頼できれば無報酬、司法書士などの専門家に依頼すると月額数万程度の報酬を支払います。空き家にするならば売却で清算してもらうとよいでしょう。
余分な返済は返金を要求する
住宅ローンの債務者が死亡しても、金融機関は知らせないと返済の自動引き落としは続きます。団体信用生命保険に加入している場合、適用条件を満たして死亡した日以降の返済は不要ですが、タイミングによっては停止前に引き落とされます。そのような余分な返済は返金の要求が可能です。
返金してもらうため、団体信用生命保険の適用はできるだけ早く手続きを始めてください。書類に不備がなくとも1~2ヵ月かかります。また、請求は3年で時効を迎えるので忘れないようにしましょう。
まとめ
住宅ローンの残債は、相続する遺産に含まれます。団体信用生命保険に加入していれば、保険金の支払いで自己負担なく完済は可能です。適用条件を確認して、早期に手続きをしましょう。
保険に未加入でも、他の生命保険の支払いや相続放棄、家の売却で返済の負担は軽減可能です。どの選択がよいのかは、他の資産の額や家をどうしたいのかで変わります。相続人が複数人いる人は、納得できるまで話し合い遺産分割をしてください。