「色」で見る野菜の効能。農家直伝、超簡単な野菜料理もお教えします!
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#ごはん・食べ物#レシピ#栄養#植物・野菜
松本 千里2023.03.30
春が近づくにつれ、春キャベツや春レタス、新ゴボウといった野菜たちが食卓をおいしく彩ってくれます。
ところでよく「野菜は体にいい」と言われますが、それはどんな理由で、どんな効能があるのでしょうか。
「そのカギは野菜の〝色〟にあるんです」と教えてくれたのは、化学肥料や農薬を使わず約50品目の野菜を愛情込めて育てる「ファームまつもと」の女将・松本千里さん。
それぞれの野菜をおいしく食べる、超簡単料理のヒントもいただきました!
野菜が「人の体にいい」理由は、野菜の色素に「抗酸化作用」があるため
赤いトマトに黄色いトウモロコシ、オレンジのニンジンなど、「ビタミンカラー」という言葉もあるほど、野菜にはさまざまな色があります。
野菜に色が着いているのは、主に太陽の紫外線による「酸化ストレス」から自分の身を守るため。太陽の光は動植物の成長をうながす一方で、生物にダメージも与えるのです。
人や動物ならば日陰に入って逃げることもできますが、動けない植物はそれもできません。
そこで植物が編み出したのが「色素で身を守る」という方法です。
この色素が持つのが「抗酸化作用」であり、人が食べることで、人体にはさまざまなよい効果が得られます。
七色の「フィトケミカル」が持つ、こんなパワーで生活習慣病を予防!
ここで私が紹介したいのは「フィトケミカル(Phytochemical)」という言葉です。
「フィト」は植物、「ケミカル」は化学物質ですから、フィトケミカルとは「植物に含まれる化学物質」という意味になります。
ちなみにフィトケミカルには色だけでなく、苦みやアク、香りなどの成分も含まれます。
独特の味や香りは、虫などから植物の身を守ってくれる武器になるのです。
フィトケミカルの代表ともいえるのが「ポリフェノール」。
皆さんも耳にしたことのある言葉でしょう。
ポリフェノールとは一つの物質を指すのではなく、アントシアニンやイソフラボン、フラボノールといったいくつもの成分の総称です。
ではここからは、フィトケミカルを赤、橙、黄色、緑、紫、黒、白の7色に分けて、それぞれの代表的成分やその作用、代表的野菜を紹介します。
私の家庭でよく作る、簡単でおいしい野菜料理も一緒にお伝えしていきますね。
赤系のフィトケミカル
トマトやスイカ、金時ニンジンなどに含まれる「リコピン」、パプリカやトウガラシなどに含まれる「カプサンチン」が代表的な色素です。
そう言えば、西洋には「トマトが赤くなると医者が青くなる」と言うことわざまでありますよね。
どちらも強い抗酸化力を持ち、がんや動脈硬化予防などに効果があるとされます。
【赤系の代表的野菜「トマト」を使う、松本家流おすすめの一皿】
そのままでもおいしいトマトですが、我が家では主に調理用トマトを育てていることもあって加熱するのが定番。
おすすめの一皿は、食べやすい形・大きさに切ったトマトをゴマ油で炒め、卵を溶き入れて半熟程度に仕上げ、塩で味付けすれば出来上がりです。
橙系のフィトケミカル
カボチャ、ニンジン、みかん、ホウレンソウなどに含まれる「プロビタミンA」、ブロッコリーやホウレンソウなどに含まれる「ゼアキサンチン」が代表的。
プロビタミンAは体内でビタミンAとなってがん予防、コレステロール調整に、ゼアキサンチンは加齢による視力低下やがんを予防してくれると言われます。
【橙系の代表的野菜「ニンジン」を使う、松本家流おすすめの一皿】
我が家の定番は、沖縄の郷土料理をアレンジした「ニンジンしりしり」。
千切りにしたニンジンを油で炒め、柔らかくなったらシーチキンを加えて、味付けは砂糖と醤油。最後に卵を入れてかき混ぜます。
ニンジンくささが消え、ニンジン嫌いのお子様でも食べやすい一品になります。
黄系のフィトケミカル
玉ネギ、ホウレンソウ、パセリ、レモン、かんきつ類などに含まれる「フラボノイド」、トウモロコシ、ホウレンソウ、ブロッコリー、カボチャなどに含まれる「ルテイン」が代表です。
フラボノイドには毛細血管の血管壁を強くして血流を促す効果、ルテインには加齢による視力低下やがん、動脈硬化の予防、肺機能向上といった効果があると言われます。
【黄系の代表的野菜「カボチャ」を使う、松本家流おすすめの一皿】
煮付けやてんぷらなど、どんな料理でもおいしくいただけるカボチャ。
我が家では茹でてつぶしたカボチャをクリームチーズと合わせ、サラダにします。
パンにのせてパセリを散らせばお洒落な一品になりますよ。
緑系のフィトケミカル
緑や森林浴という言葉のイメージ通り、気持ちをリラックスさせてくれるのが緑色。
代表的な色素は、ホウレンソウやブロッコリー、オクラ、春菊、緑ピーマンなど緑の野菜に含まれる「クロロフィル」です。
がん予防のほか、コレステロール調整、消臭・殺菌などの効果があるとされます。
【緑系の代表的野菜「ピーマン」を使う、松本家流おすすめの一皿】
細切りにしたピーマンと塩昆布を和えると、それだけでご飯が進むおかずにもお酒の肴にもなります。
ピーマンは茹でてもよいですし、油で炒めても、電子レンジで加熱してもOK。
紫系のフィトケミカル
ナスや紫イモ、赤シソ、紫キャベツ、ベリー類、黒豆などに含まれる「アントシアニン」が代表。加齢による視力低下や高血圧の予防、肝機能保護などの効果が期待できます。
【紫系の代表的野菜「ナス」を使う、松本家流おすすめの一皿】
煮たり焼いたり、和洋中様々に使えるナス。
我が家でよく作るのは、ナスとチキンのスパゲティです。
一口大に切ったナスとチキンに細切りショウガを加え、油で炒めます。
醬油で和風に味付けをした後はパスタのゆで汁でのばし、最後にパスタを合わせれば完成!
黒系のフィトケミカル
ゴボウやヤーコン、ジャガイモ、バナナ、ナスなどに含まれる「クロロゲン酸」が代表的。
コーヒーの苦みや香り、野菜の切り口を変色させる成分でもあり、がん予防、血圧調整、血糖調整、ダイエット効果などがあります。
もう一つ、緑茶、柿、ワインなどに含まれる「カテキン」も黒系の代表的成分。
タンニンとも呼ばれる苦み成分でもあり、がん予防、コレステロール調整、ダイエット効果などがあるとされます。
※クロロゲン酸の損失を防ぐための豆知識
嫌われがちな野菜の「アク」ですが、その正体はクロロゲン酸。
「ゴボウを酢水にさらしてアクを抜く」というのは、大事な栄養素であるクロロゲン酸を捨てる行為です。普段の家庭料理では特別なアク抜きなどはしなくても、十分においしくいただけます。
【黒系の代表的野菜「ゴボウ」を使う、松本家流おすすめのアイデア】
キンピラや煮物にするのが一般的なゴボウですが、サラダでもおいしくいただけます。
スーパーなどで見かける、ゴボウとニンジンを細切りにしたパックを使えばお手軽ですよ。
茹でるとパサつくため、油で炒めてマヨネーズで和えればそれで完成。
一本丸ごとゴボウを買った時には、今日はキンピラ、翌日は豚汁とサラダ、残りは炊き込みご飯の素にして冷凍保存するなどすれば、ムダなく使いきれます。
白系のフィトケミカル
キャベツ、大根、白菜、ワサビ、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜に含まれる「イソチオシアネート」には、がん予防、ピロリ菌対策、コレステロール調整、血液サラサラ効果があるとされます。
ネギ類、ニンニク、ニラなどに含まれるのは「硫化アリル」。
玉ネギを切る時に涙が出る原因となる成分で、がん予防、抗菌効果、高血圧予防、血液サラサラ効果が期待できます。
キャベツや大根おろしが持つ、消化促進の効果も白系フィトケミカルの力と言えるでしょう。
【白系の代表的野菜「白菜」を使う、松本家流おすすめのアイデア】
主に鍋や漬物などに使う白菜。
「余らせてダメにしてしまった」という経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
白菜はクセがなく、炒め物でもおいしくいただけます。
よりおいしくするためのひと手間が「半日ほどタオル掛けに干す」こと。
もちろん室内でOKです。
朝干しておけば夕方には程よく水分が抜けて、炒めた時により旨みが凝縮されています。炒める時間も短くて済みますから、時短にもなりますね。
ちなみに白菜を2回以上に分けて使う時には、必ず内側から使いましょう。白菜の成長点は内側にあるため、そちらを先に食べることで劣化を防げます。
以上、7色のフィトケミカルそれぞれについて効果や特徴を見てきました。
春らしくなってきた近頃、日々の生活にこの7色をまんべんなくたっぷりと取り入れて、健康で元気いっぱいの毎日を過ごしていきましょう。
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いかがだったでしょうか。
今回お話を聞かせてくださった松本さんは、ジョンソンホームズ主催のイベント「ライフスタイル倶楽部」の人気講座「農家さんが教える味噌作り体験」の講師を務めてくださっています。
講座のなかでは、今回紹介したような野菜の知識や安心安全な食品選びのためのお話もあり、好評です。
なお、イベント情報は「住まいと暮らしのお役立ちメディア
「はれ暮らし(https://www.johnsonhome.co.jp/media/event)」
で公開しますので、興味のある方はぜひそちらをご覧になってみてくださいね。
ほかにもインテリアづくりや親子DIY教室、料理などさまざまなイベントを随時開催中です!
- 記事を書いた人
- 松本 千里
ファームまつもと
無化学肥料・無農薬栽培で約80品目のお野菜を栽培。
https://www.facebook.com/kitabeji/