家づくりを始める前に
ハウスメーカーと工務店の5つの違いとは?それぞれのメリット・デメリットと選び方
この方にお話を聞きました
玉野 富隆さん
ジョンソンホームズ 新築住宅事業「インゾーネデザインラボ」マネージャー
建築学科卒。ジョンソンホームズの住宅の現場監督を6年間経験したのち、その知識を活かして住宅営業に転属。現在はデザイン新築住宅「インゾーネデザインラボ」責任者として数多くの家づくりに携わっている。
この記事でわかること
これから家づくりをすることは決定していても、依頼先はハウスメーカーや工務店などいくつもあり、どうすればよいか悩んでいませんか。違いも知らずに適当に選んでは、希望を十分に反映させられず不満が残る家づくりになってしまうかもしれません。
そこで本記事では、ハウスメーカーと工務店について5つの違いと、それぞれのメリット・デメリット、選び方について解説していきます。家づくりの依頼先業者とは、メンテナンスなどでこれから何十年と付き合いが続きます。後悔のない選択をするため、ぜひ参考にしてください。
家づくりを手掛ける業者の種類
家づくりの依頼はハウスメーカーと工務店以外に、建築設計事務所やビルダーでも可能です。以下の表では、それぞれの特徴を一覧にまとめました。
種類 | 特徴 |
ハウスメーカー | ・設計と施工が同じ業者 ・自社で建材の生産工場をもつ ・全国規模 |
工務店 | ・地域密着やフランチャイズ ・要望には柔軟に対応 ・増改築にも対応可能 |
建築設計事務所 | ・建築家が運営 ・設計がメインで施工は別業者の場合も ・デザインの自由度が高い |
ビルダー | ・複数県で運営 ・年間数十~数百棟を手がける ・注文住宅だけや建売住宅だけの業者もある |
同じ条件で家づくりを依頼しても、どこまで実現できるかは業者によって異なります。
ただし、必ずしも上記に当てはまる訳ではなく、地域や会社の規模によって呼ばれ方やできる範囲は異なります。ハウスメーカーによっては自社工場を持っていないケースもあるため、傾向として認識しておく必要があります。
ハウスメーカーと工務店の5つの違い
ハウスメーカーと工務店の違いを簡単にまとめると次の5つです。
- 費用
- 対応エリア
- 自由度
- アフターメンテナンスの内容や対応
- 工期
ハウスメーカーと工務店の違いについて、家づくりにどのような影響が出るのかを詳しく解説していきます。
費用
ハウスメーカーは技術開発や広告に費用をかけており、自社生産の建材で原価を抑えられても、トータルでは地域密着の工務店より高額になる傾向です。同じ広さの土地で家づくりを依頼する際、費用に余裕がないならば工務店を中心に検討したほうがいいかもしれません。
また費用の違いは、採用している建て方にも影響しています。ハウスメーカーは標準仕様があるプランから選ぶセミオーダー形式となっていますが、工務店はゼロから仕様を検討してもらえる場合が多いです。
対応エリア
対応エリアは、ハウスメーカーが全国規模なのに対し、工務店は店舗がある周辺の市区町村がメインです。そのため、工務店の公式サイトで気に入った事例を見つけても、エリア外のため対応してもらえないという可能性もあります。工務店に依頼したい場合は、最初に対応エリアの確認をおこないましょう。
業者の中には名前に工務店とついていても、店舗を複数構えていたり、ハウスメーカーであったりするケースがあります。
自由度
自由度は、工務店のほうがハウスメーカーより高い傾向です。費用の違いでも触れたように、ハウスメーカーの場合は提供されているプランから住宅を選び、さらにキッチンや収納スペースなどのグレードを決定していきます。プラン外の注文になると、高額になったり実現できなかったりすることもあります。
それに対して工務店では、希望の条件で可能な建築を提案してくれるため、予算内で自由度の高い家づくりが可能です。ありきたりな家にしたくない、細部にまでこだわって家づくりをしたい人は、工務店がおすすめです。
アフターメンテナンスの内容や対応
完成した家に長く住み続けるには、アフターメンテナンスが欠かせません。ハウスメーカーの場合は資金力もあり、充実した保証内容で、問い合せ窓口も用意されておりスピーディーな対応を期待できます。
工務店の場合はハウスメーカーと比較すると規模が小さいため、住宅の完成後も顧客ひとりひとりにきめ細やかなアフターフォローを期待できます。ただし小規模すぎる工務店だと、人で不足でアフターメンテナンスまで手が回らない可能性もあります。
アフターメンテナンスに関しては業者によってさまざまで、一概にどちらがよいかを決めるのは難しいです。ただし、倒産してしまうとアフターメンテナンスは受けられなくなってしまいます。保証を受け続けられる可能性が高いという点においては、規模が大きく倒産しずらい業者がおすすめといえるでしょう。
工期
ハウスメーカーは、資材を自社工場で調達・加工し、マニュアルに沿って現場で工事をおこなうため、工期は短くなる傾向にあります。工務店は、ハウスメーカーより現場での手作業が多く工期は長くなる傾向です。職人の技術力によっても工期の長さは異なります。
設計の段階でも、仕様に沿ってグレードを選択していくセミオーダー形式のハウスメーカーのほうが、検討する時間が短いでしょう。
実際にどれだけ工期に違いが出るかは、建てたい家の構造や仕様を決める決断力で変わります。依頼先を最終的に決める際に、見積もりの時点の工期も比較してみましょう。
ハウスメーカーのメリット・デメリット
ハウスメーカーと工務店のどちらを選ぶかは、それぞれのメリット・デメリットも把握して慎重に決めましょう。まずはハウスメーカーのメリット・デメリットについて解説します。
メリット
ハウスメーカーで家づくりを依頼するメリットは次の3つです。
- 安心感がある
- 品質が一定
- 最新の技術で家が建てられる
安心感がある
全国規模で経営しているハウスメーカーであれば、中小の工務店よりは倒産のリスクが下がり、アフターメンテナンスが途切れない安心感があります。長期だと20~30年保証のものもあり、早々に倒産してしまうとアフターメンテナンスに別途費用が必要になります。
品質が一定
自社工場で規格がそろえられた建材を使うハウスメーカーでは、完成する家の品質は一定です。施工する人の技術力に左右される部分が減り、不具合も起こりにくいといえるでしょう。
また、提供されるサービスの品質にも期待ができます。マニュアル化された対応のおかげで、極端に悪い対応をされる可能性は低いです。
最新の技術で家が建てられる
全国規模のハウスメーカーは資金力があるため、新規の技術開発にも力を入れやすいです。各ハウスメーカーが「耐震の実験で震度〇に××回耐え抜いた」「断熱や気密性に優れ年間で〇〇万円の節約」といったような文言で最新の技術力をアピールしています。
店舗や展示場でもハウスメーカー独自の最新技術について詳しく解説してもらえるため、気になる技術があれば問い合わせてみましょう。
デメリット
ハウスメーカーで家づくりを依頼するデメリットは次の2つです。
- 小回りがききづらい
- 費用が工務店よりも高くなりやすい
内容や対策はないのかを解説していきます。
小回りがききづらい
ハウスメーカーでの家づくりは、仕様が決まったプランから選ぶ形になります。そのため仕様から外れた希望など細かな要望には、小回りがききづらい場合が多いです。
具体的に実現したいデザインや仕様が決まっている場合は、ハウスメーカーを選ぶ段階で自分が希望する条件を満たす仕様を選択できるところを選ぶとよいでしょう。また、見積もりの段階で予算内で希望を実現可能か聞くなど、本格的に依頼する前に要望を聞いてもらえるかチェックしておきましょう。
費用が工務店よりも高くなりやすい
ハウスメーカーは自社生産で建材の原価は抑えられても、技術開発や広告費などで費用がかかります。仕様から外れた安い建材の採用も難しく、工務店より高くなりやすいです。
しかし品質の高さから家の寿命が延びると、長期的に見て工務店より高いとはいえなくなります。どちらが本当に高いのかは、将来のメンテナンスや売却まで視野に入れ、トータルの費用で判断しましょう。
工務店のメリット・デメリット
次は工務店のメリット・デメリットについて見ていきましょう。工務店の場合は、個々の店舗によってハウスメーカーより対応に違いがでやすいため参考程度にしてください。
メリット
工務店での家づくりのメリットは次の2つです。
- こだわりを反映させやすい
- コミュニケーションの取りやすさ
ハウスメーカーと違い、なぜこれらが実現できるのかまで解説していきます。
こだわりを反映させやすい
工務店は、技術面・資金面において可能な限りで希望に応えてくれることが多いです。間取りや素材、設備などでこだわりを反映させたいならば、仕様による縛りがない工務店がおすすめです。
設計はハウスメーカーのときより選択肢が多く、時間がかかるかもしれません。しかしこれから何十年も暮らす家になるため、こだわり派の人は納得できる家づくりを優先させることをおすすめします。
コミュニケーションの取りやすさ
地域密着の工務店では直に職人を抱えていることが多く、現場とのコミュニケーションを取りやすいです。営業の担当者では出てこないアイデアを提案してもらえたり、建設中の現場で簡単な修正なら対応してもらえたりします。
また、担当者が抱えている案件が少ないと一人あたりにかける時間も増えます。信頼関係を築きやすいため、要望も伝えやすいでしょう。
デメリット
工務店で家づくりをするデメリットは次の2つです。
- ハウスメーカーと比べると倒産のリスクが高い
- 実物の見学が難しい可能性がある
ハウスメーカーと比べると倒産のリスクが高い
工務店は、ハウスメーカーより規模は小さく倒産のリスクは高いです。建築中に倒産されてしまうと、費用の回収は難しくなりなす。
また家族経営の工務店では、経営者の高齢化や病気、代替わりがいないなどで倒産することもありえます。建築中は倒産せずとも、長期的なアフターメンテナンスを利用すると倒産の可能性も高まるでしょう。計画的な倒産ならば、工務店側である程度対処してもらえても、まったく同じ条件のアフターメンテナンスとは限りません。
実物の見学が難しい可能性がある
小さな工務店では、モデルルームや展示場がないことは珍しくなく、実物の見学がハウスメーカーより難しい可能性があります。どれだけ写真で実績を提示してもらえても、実物を見ないとイメージが掴みづらいでしょう。
建築中の家の見学会などを実施している場合があるため、タイミングを合わせて積極的に参加しましょう。また、工務店が過去に携わった家で、見学の受け入れ先を紹介してくれることもあります。
工務店との工事請負契約を結んでしまうと、容易にキャンセルはできません。実物を見ないで契約書にサインをするのは、できるだけ避けたほうがよいです。
ハウスメーカーに依頼するときのポイント
実際に家づくりをハウスメーカーに依頼する場合、後悔しないため次の2つのポイントを抑えておきましょう。
- 信頼がおける担当者の存在
- 自分の希望を実現できる会社か
なぜこれらがポイントになるのか解説していきます。
信頼がおける担当者の存在
信頼できる担当者に出会えれば、家づくりに関する不安を気軽に相談できます。信頼できるかは、実際に話をした際の印象や説明のわかりやすさで判断しましょう。初めて家づくりに挑む人に対して、専門用語を多用し契約を急がせるような担当者ばかりのハウスメーカーは避けたほうがよいでしょう。
利用者の多いハウスメーカーであれば、SNSなどでリアルな口コミ・評判の収集が容易です。事前に候補を絞り込み、最終決断は複数社の担当者と話をしてから比較し決定しましょう。1社だけでは、本当によいのか悪いのか判断が難しくなります。
自分の希望を実現できる会社か
ハウスメーカーは標準仕様があるとはいえ、どこまで希望が実現できるかは聞いてみないとわかりません。工務店にしなくとも実現できる可能性はあるので、まずは問い合わせてみましょう。
気になったハウスメーカーは資料を取り寄せ、希望するデザインや間取りの事例があるのかなどをチェックしてください。取り寄せに費用はかからず、データであればすぐに手に入るハウスメーカーもあります。
工務店に依頼するときのポイント
工務店で家づくりを依頼する際は、次の2つのポイントを抑えてからにしましょう。
- 会社のホームページを確認する
- 住宅完成保証制度加入の有無
なぜこれらの確認が必要なのか詳しく見ていきましょう。
会社の公式サイトを確認する
2023年現在、Webからの情報収集は当たり前になっています。工務店の公式サイトで、強みや実績、どのエリアまで対応しているのかなどを確認しましょう。何年も更新されていないところは、情報の誤りや人手不足などの不安が残ります。
知りたい情報が掲載されていなければ、資料請求や問い合せもしましょう。本来は優良な工務店であっても、宣伝が不得意なだけの場合もあります。気になった業者があれば、実際に担当者と話してみることをおすすめします。
住宅完成保証制度加入の有無
住宅完成保証制度とは、業者の倒産などで工事が中断しても、依頼者の負担を最小限に抑えて別業者を斡旋してもらえる保証です。加入していればもし倒産しても完成できるので安心です。どこまで保証されるかは加入している制度によるため、有無だけでなく内容の確認も忘れないでください。中には追加の負担なしで対応してくれるものもあります。
ハウスメーカーと工務店で迷う場合の選び方
ここまでハウスメーカーと工務店の違いやメリット・デメリットを紹介してきました。
それぞれに良い点悪い点があり、どちらにすべきか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。ここではハウスメーカーと工務店で迷う場合の選び方について解説します。
家づくりでなにを重視したいのか考えて、じっくりと検討してください。
ブランド力や安心感を優先したい
ブランド力や安心感を優先したい人は、ハウスメーカーがおすすめです。全国のどの店舗で依頼をしても、一定の対応や品質は保たれ長期的にアフターサービスを受け続けられる可能性が高いです。また、口コミ・評判といった情報を収集しやすく、問い合せをする前でもある程度は絞り込めます。
大手のハウスメーカーだけでも数十社あるため、さらなる厳選は必要です。デザインや費用、保証内容などでさらに比較してください。
細かい部分にもこだわって家づくりをしたい
細かい部分にもこだわった家づくりを望むならば、工務店への依頼がおすすめです。ハウスメーカーのように決まった仕様がないケースが多く、独創的な間取りでも実現を検討してもらえるでしょう。
こだわりすぎていては、いつまでも設計が決まらず費用は上がり続けてしまいます。事前に予算の上限を決め、希望には優先順位をつけておくとよいです。担当者のアドバイスも聞いてこだわりのマイホームをつくりましょう。
まとめ
ハウスメーカーと工務店での家づくりには、費用、対応エリア、自由度、アフターメンテナンスの内容・対応、工期の違いがあります。本記事で紹介してきたそれぞれのメリット・デメリットも踏まえ、どちらのほうが自身の希望を実現できるのかで決めてください。
正式に依頼する際は、可能な限り業者の現物を見て担当者との相性も見極めましょう。アフターメンテナンスも含め、依頼先とはこれから長い付き合いになります。不安を残したままの契約は、後悔するリスクを高めるだけです。
この記事を書いた人
白崎 貴子
ジョンソンホームズ マーケティング室
衣食住を自分好みにアレンジするのが好きです。
特にお家で好きなラジオをかけながらゆっくりご飯を作ったり、お花や緑が目線に入ったりすると心が落ち着きます。